『相場師』福沢桃介(44)米放資界における婦人の勢力


 過去において、女性は男性と同じ「人類」とはみなされておらず、
どんな分野でも女性は偏見と差別にさらされていた、らしい
のですが、『米国放資界(アメリカの株式投資の世界)における婦人
の勢力』と題する部分は「欧米活歴史」の中でも異色の面白さです。


 桃介はこんな風に書きます。


「単に相場の勝負を目的にウォール街へ出入する婦人の数も、
今日では決して少なくはない。されど、大多数の仲買連中は、心から
婦人客を歓迎せぬ。蓋し婦人客ほど諦めの悪いものはないからである。


 目の前にチラつく大儲けを嗅ぎつけ、矢も楯もたまらずウンと
深入りをして見ても、さて一朝ことの狂いを生じて、元も子も
消え去る場合が来ると、お座の醒める尾篭の振る舞いを演ずるのが
婦人のもち前である。


 自然大きな仲買店では、成るべく投機一点張りの婦人客を避ける
ことを工夫する。損失を蒙ると前後の見境なく泣きわめき、いかに
宥(なだ)めても容易に聞き入れないのが婦人客の常態である。」

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『相場師』福沢桃介(43)買って買って買い捲るべし(3)


 「暗黒の木曜日」のはるか以前、アメリカの株式相場が若くて
屈強だった時代に「買って買って買い捲って」大成功したひとたち
がいた。わが国で言えば1980年代後半の「特金・ファントラ相場」、
「資産バブル相場」の時代のようだったのでしょう。


 その後の大恐慌に至る株式好況時代の話です。桃介は大相場を
演出した人物のひとりとして活歴史中にロズウェルのことを買いて
いるのですが、ひょっとすると、「本能的に」そうした手法に不安
を覚えて「買って買って買い捲るロズウェル」を登場させたのかも
しれません。

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『相場師』福沢桃介(42)買って買って買い捲るべし(2)


 「嘗てニューヨーク州の或る数学の大家は幾多の表及び統計書類
に拠り、数年間に渉る株の変動を数学上から調査した結果、常に一貫
して売買両方面に大当たりを取って居た店は、誰あろう嘗て
ニューヨークの知事を勤めたことのあるロズウェル、ビー、フラワー
の出して居た仲買店、即ちフラワー商会であることを確かめた。」


 ロズウェル商会は抜群の「当り屋」である。そのパフォーマンス
は群を抜いており、数年にわたって高いリスク・リターン値(なのか
どうか分かりませんが)を示している、とニューヨーク州のある
数学の大家が分析している。


 この、「常に一貫して売買両方面に大当りを取って居た」という
言い方が面白いのですが、では、そのロズウェルの相場流儀は?と
なりますと、これが「買い一辺倒」だ、と桃介は言うのです。


 「彼の座右銘に左の如き文句がある。極めて平凡のようではあるが、
終始一貫之を行ったと云う処に妙味がある。『株の値を釣り上げたい
と思わば、宜しく其株を買って買って買い捲るべし』彼の採った方法
は唯々之だけであった。」

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