池井昌樹『理科系の路地まで』(6)(思潮社、1977年10月14日発行)
「線路のある村」。
日焼けしたラムネ色の壜の中で
てっぽだま いちごあめ こおりざとう
ずいぶん古そうなほこりの飴玉が
やんだ目をしばたたいてる
池井はラムネの壜が好きである。大学一年のときである。池井が私の故郷の家を訪ねてきたことかある。そのとき、青森かどこかで買った(拾った?)ラムネの壜を持っていた。「いいだろう、いいだろう」としきりに同意を求める。私もラムネの壜は好きだが、聞こえなかったふりをした。その壜は、私が東京へ池井を訪ねたとき、本棚に飾ってあった。
ここに描かれているのは「ラムネの壜」ではなく、「ラムネ色の壜」なのだが、ラムネの壜のなかに、「てっぽだま いちごあめ こおりざとう」が入っていても楽しいかもしれない。ラムネの壜の入り口にあるビー玉をポンと押すと、炭酸水(ラムネのように)のように、いろいろなアメがあふれだすとおもしろいと思う。
ただし。
私は、ここに書いてある「てっぽうだま いちごあめ こおりざとう」が嫌いである。飴玉というものが嫌いである。なかでも「いちごあめ(いちご色、いちご味の飴)」は、私にはとても「怖い」。池井は私の嫌いなものを書き並べる。
「幻想の夏」のⅢの部分は、
ひるる る びるる ぶ ぶくぶく びるるる
という一行ではじまる。これは、どうやらひきがえるの声らしい。池井はいろいろな詩人の影響を受けているが、草野心平も池井に影響を与えたひとりかもしれない。私の記憶では、池井は「心平さん」と呼んでいた。
このカエルの声(その変奏)は、もう一度出てくるが、その前の連に、
笹の葉のうちわ
タナパーダの息のにおい
天の極北 しいんしいんとまわり出し……
昔が夜空で凍っている
ここには宮沢賢治がいると思う。「しいんしいんとまわり出し」の「しいんしいん」という音は、宮沢賢治に通じるものがあると思う。この音は、私にはとても気持ちがいい。
「台風の夜」には、
赤いみずあめの町の匂いがしらしらゆれている
という「音」が出てくる。いや、これは「音」ではないのかもしれないが、私の耳には「音」として聞こえる。
「匂い」すらも「におい」ではなく「音」のように聞こえてしまうのは、いままで呼んできた詩のなかでは「におい」だったものが「匂い」と書かれているからかもしれない。
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