自民党憲法改正草案を読む/番外378(情報の読み方)
2020年08月18日の読売新聞(西部版・14版)が、安倍の「日帰り検診」を、こう伝えている。(4面)
首相日帰り検診/体調懸念の声も/政府・与党内「顔色悪い」
この見出しを読んで、私は驚いた。きのうネット(読売オンライン、2020/08/17 22:19、https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200817-OYT1T50144/?fbclid=IwAR2qCKzACxT36V1o1AkFEsJbxZvpU7zJ2r4mnFU3wXv77nCZRBavemVAZJQ)で読んだ見出しとは違う。ネットでは、こう書いてあった。
首相「追加検査」、病院で7時間半過ごす…記者団に一言「お疲れさま」
見出しがぜんぜん違う。「病院で7時間半過ごす」が消えている。
見出しは、紙面の都合で大きさが変わったりするが、ただそれだけの理由で見出しを変えたのか。私は疑問を持っている。
記事を読むと、ネットにはあって、新聞にはない部分がある。
首相は第2次内閣発足以降、半年に1回、人間ドックを受診してきた。病院関係者によれば、この日の来院は6月13日に受けたドックの「追加の検査」が目的だという。
これは、とても変である。考えるに、ネット配信のあと、紙面では記事を削除したのだろう。私が読んでいるのは14版(最終版)である。地方に配達される新聞では、「人間ドック」のことが書かれたままかもしれない。
私は、ここから考える。
なぜ「6月13日の人間ドック」を削除したのか。「追加検査」を削除したのか。
「追加検査」というのは、そもそも「7時間半」もかかるものなのか。「7時間半」は「検査」だけにかかった時間なのか。それとも「結果」が出るまで待っていたために7時間半かかったのか。安倍の検査だから、一般人の検査と違って、「時間待ち」ということもないだろう。優先して検査されるだろう。
私は人間ドックで膵臓にポリープがあると診断され、別の大学病院で再検査を受けたことがある。そのときは学生が機器をとりあつかい、「先生、ポリープが見つかりません」「位置が違うだろう」というようなやりとりがあって、ポリープ発見までに30分以上かかるという「笑い話」のようなことを体験したが、安倍を「検診」するのはまさか学生ではないだろう。専門の「教授クラス」が検診するだろう。それでも7時間半もかかる検診とは何なのか。
検診が必要だったのは1か所だったのか、複数だったのか。
「7時間半」が見出しにあると、当然、そういう疑問がわいてくる。
さらに、「検査する」という報道がされ、「検査が終わった」と報道するのなら、そこには当然のこととして「結果」の報道も含まれていいはずだ。
病気は個人のプライバシーだから「公表(報道)」できない、ということかもしれないが、「健康」な場合は、「健康に問題がないことが確認された」と報道(公表)するだろう。「体調が悪いと感じていたが、検査結果は何も問題がなかった」と言うだろう。
「体調が悪い」場合でも、ときには側近が「何も問題はなかったと聞いている」と答えるのが政治家の「健康管理」かもしれない。
そういうことは一切書かず、読売新聞は、記事をこう締めくくっている。
先週末に首相と面会した麻生副総理兼財務相は17日、財務省で記者団に「休まず連続で働いたら、普通だったらおかしくなるんじゃないの」と述べた。
通常国会期間中、安倍に「休み」がなかったということを問題にしているが、コロナ問題のさなか、家で犬と遊び、テレビ(?)のリモコンを操作している「休日」の映像も「激務」ということか。たしかにカメラが近くにあれば、そしてその映像が公開されるのであれば「仕事」と呼べるかもしれないが、私には「休日」にしか見えない。
さらに国会閉会後は、野党の臨時国会開会の要求に答えないし、閉会中審議にも出席しない。拡大するコロナ問題に対しても、何ら対策を発表しない。6月21日以降、安倍が姿を見せたのは広島、長崎の原爆の日の式典、戦没者追悼式の式典だけだろう。そのさいの記者会見も、あらかじめ用意された「質疑」を「朗読」するだけでおしまいにしている。「休まずに連続で働いた」とはとても言えない。
問題は。
なぜ、読売新聞は、麻生の談話を取材しているだけで満足しているのか。麻生の談話を公表することで、「安倍は休まずに働いている」ということを強調しようとするのか、である。
7時間半の検診よりも、安倍の長時間労働を問題にするのはなぜだろう。7時間半もかかる検診の重要性を隠すためだろう。
いま、国民が知りたいのは、安倍が何日休まずに働いたかではない。「病気」がどうなっているか、である。「人間ドック」を受け、その「追加検査」を受けたのなら、いちばんの注目は「病気」である。
検診に7時間半も時間がかかり、しかもその結果を「公表」できない。ここに、問題が集約している。
他人の病気は簡単には把握できない。プライバシーの問題もある。しかし、安倍は「私人」ではない。安倍の健康は「公共」の問題である。
それが「うそ」であってもいいから、ジャーナリズムであるかぎりは、「健康に問題はありません。長い間休んでいないので疲労がたまっているだけです」くらいの談話を、安倍の側近から引き出すべきなのである。
2020年08月11日の読売新聞(西部版・14版)では、
首相 正月以来のジム
という見出しで、安倍があたかも「リラックス」して体調維持につとめているというような記事を書いている。
この記事に対して、私は「病気隠し」ではないのかという疑問を書いた。(https://blog.goo.ne.jp/shokeimoji2005/e/254fde6bb915a9508d12ab209e7709a6)
安倍のジム通いについては、運動しているのではなくジムに通っていることを装って、個室で治療・診察を受けているという「噂」が流れている。
こういうときこそ、ジャーナリズムは情報を「取材」しないといけない。取材しなくても、情報をリークしてくれる人間がいるとしても(たとえば麻生の談話)、それをそのまま「談話が取材できた」と喜んで紙面化してはいけない。その「うそ」は「健康に問題はありません」とうそよりタチが悪い。安倍への「同情」を誘うものだからである。
「ジム」報道のときは、「首相は趣味のゴルフにも1月4日以来、行っていない。」が記事の締めくくりだった。
ほんとうに安倍の「健康」が心配なら、きちんと取材して、「事実」を書くべきだ。麻生の「安倍がカワイソウ」とという談話など必要ない。
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「情報の読み方」は9月1日から、notoに移行します。
https://note.com/yachi_shuso1953
でお読みください。
#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位
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https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
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