破棄された詩のための注釈01破棄された詩のための注釈01 「花は盛りを過ぎていた」と書いて消した。「花は、これから開こうとしていた」の方が、主人公の悲しみを孤立させる、より印象的になると思った。しかし「花は」と書いたあと、ふたたび「盛りを過ぎていた」とつづけてしまった。 深紅の花弁のふちにあらわれた細い金色が、花を浸食する錆のように思えた。 どうしても、「錆」ということばを書きたかったからである。