嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(65) | 詩はどこにあるか

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「小人間史-他」から

* (もう愛情の失せた太股をおまえの腹の上に乗せてみた)

 「おまえ」とはだれだろうか。人間だろうか、女だろうか。私は、ふと「犬」を思ってみた。「腹の上」は「銅の上」でもある。「愛情の失せた」は「太股」をとびこえて「お前の腹」を修飾している、と読む。

むなしい街燈がひとつそこいらを照らしているばかりである

 ホームレスと犬。嵯峨がこの詩を書いたとき、ホームレスということばがあったかどうかわからない。路上で生活している男。夜、犬と寄り添っている。
 「愛情の失せた」は冷たいことばだが、もう「肉体」になじんでしまっていて、「愛情」ということばが必要ではない、という意味に読んでみる。





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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
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