嵯峨信之『OB抒情歌』(1988)(17) | 詩はどこにあるか

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* (深い深い眠りからさめました)

 「深い深い眠り」は麻酔による眠りである。何の手術かわからないが、嵯峨は手術を終え、目を覚ましたときのことを書いている。

いま金いろの天秤で計つているのは
たしかにわたしから切りとられた小さな死です

 切り取られた肉体は、それがどの部分であれ「死」である。ある部分を殺すことで、肉体の全体を救う。切り取られた「死」と、残された「生」が向き合っている。
 「天秤」という比喩を美しい、と思う。
 切り取られたはずの「死」が生きていて、残された「肉体(生)」は死へ向かって動いていく。「死」は、「生」が死に向かってやってくるのを、待っている。「死」が「生」を計るとは、そういうことを意味すると思う。









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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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