一粒の葡萄の実もなく
一枚の枯れ葉もついていない
これを嵯峨は、次のように言いなおす。
しかしそれはなんと静かなことだろう
実も葉もない。けれど「静かさ」がある。「静かなこと」がある。詩はここで完結してもいいと思うが、嵯峨はさらにことばをつづけ、こんなふうに言いなおす。
どこかにぼくの知らない価値があるようだ
「静かなこと」は「価値」である。それまでつかわれてこなかった「ある」という動詞が、それを「念押し」している。わかりやすくなったが、つまらなくなった、とも言える。
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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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