嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(76) | 詩はどこにあるか

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* (いくたびとなく小さな死が横切つた)

ある名は忘れ ある名は覚えている

もはや日ごと夜ごとに自分からもはるかに遠ざかつている

 「ある名は忘れ」と書くとき、嵯峨は何を覚えているだろうか。「ある名は覚えている」と書くとき、覚えているのは「名」だけだろうか。「名」は明示されているが、明示されていないものが同時に存在する、あるいは存在した。
 しかし、それは「遠ざかつている」。
 この「……ている」が私にはとても複雑に感じられる。「遠ざかっていく」ではなく、「遠ざかりながら/そこに存在する(ある)」。
 これは何か。
 嵯峨は「小さな死」と呼んでいる。--と読んでみる。




*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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