嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(50)* (余白の村にある未完の寺)丘の上は一日中青空がひろがつていたその他物音ひとつしない 青空があるだけ。物音がしない。時間が止まったような世界。 でも「その他」というのは何? 「物音ひとつしない」というのは、静寂、あるいは沈黙。嵯峨は、その絶対的な沈黙を「音」として聞いており、それ以外の音は聞こえないと言うのだ。 この沈黙は「余白」か、あるいは「未完」か。どちらでもない。完成した絶対的な充実である。