嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(17) | 詩はどこにあるか

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* (夏のあいだ)

矢のようにかすめさつた漕手のない一艘の大型カヌーがあつて
心の襞に大波小波がうちよせた

 「大波小波」はカヌーを奪っていった波なのだろうが、カヌーが走るときに起きる波にも感じられる。
 「心の襞」ということばが、「情景」を繊細にさせる。視界よりも、心の中に残っている映像。それが打ち寄せる。
 カヌーを奪った波なら、心をも奪うか壊してしまうだろう。



*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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