嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(16) | 詩はどこにあるか

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* (時の壁に)

時の壁に魂を投げつけると火花を散らして言葉がとびだす

 ことばが飛び出すのは「時」からだろうか。「魂」からだろうか。
 この一行目の「魂」は、こう変化する。

ひとが知つたことは
言葉と文字 そのいくつかだろう
でもいつかはその二つのものに魂しいは縛られる

 「魂しい」と「しい」というひらがな(送り字)つきの、嵯峨特有のことば。
 「魂」と「魂しい」は書き分けられている。
 「魂」は多くのひとが思い描いているもの。それを「時の壁」に投げると「言葉がとびだし」、「魂しい」がうまれる。「魂しい」は自分のなかから飛び出した「言葉」に縛られる。
 とびだすは解放、縛るは拘束。あるいは、規制か。自由と不自由ということばも思い浮かぶ。



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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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