嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(7) | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

詩の感想・批評や映画の感想、美術の感想、政治問題などを思いつくままに書いています。

* (いちどだけ呪いながら)

日を少しひろげて
おまえをやわらかに包んでみた
おまえは花よりももつとやさしく風にさわり
小さなことばを光りの上に泳がせた

 「ひろげる」と「包む」。反対の動きが読者の意識を詩へと誘う。矛盾のなかに何かが生まれてくる予感がある。既に知っているものではなく、知らないものが姿をあらわすとき、そこには必ず矛盾がある。
 パラダイムの変更、と言っていいかもしれない。
 「やわらかな」は「やさしく」へと変化していくことで、動き始めたものを、そっと後押しする。
 「さわる」は「ひろげる」が変わったものか、それとも「包む」が変わったものか。どちらもありうる。
 この「不安定」を経て、動詞は「泳ぐ」へと変わっていく。



*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
『誤読』販売のページ
定価の下の「注文して製本する」のボタンを押すと購入の手続きが始まります。
私あてにメールでも受け付けています。(その場合は多少時間がかかります)