トランプ報道を読む | 詩はどこにあるか

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トランプ報道を読む
             自民党憲法改正草案を読む/番外270(情報の読み方)

 2019年05月27日の読売新聞(西部版・14版)の一面の見出し。

トランブ氏/首相のイラン訪問 期待/貿易協定は参院選後に/きょう首脳会談

 まるで安倍がイランを訪問すること、アメリカとイランのの関係改善のために何かすることがトランプの訪日のテーマみたいな書き方だが。そんな期待を伝えるため、あるいは「要請」するための訪日するはずがないだろう。だいたいアメリカのイラン制裁の結果、困っているのは日本であって、アメリカはぜんぜん気にしていない。イランとの関係悪化が気になるならイラン制裁などしないだろう。まるで安倍に、アメリカとイランの関係改善(橋渡し)をする能力があるかのような書き方には問題があるだろう。日本とイランの関係をどうするか、ということさえ、わかっていない。
 本当のニュースは「貿易協定は参院選後に」にある。それが「証拠」に、3面の解説にはイラン問題など書いていない。安倍とトランプの「親密さ」と参院選のことが少し書かれているだけだ。
 一面の記事中には、見出し部分は、こう書いてある。(1)(2)は、私が便宜上補足した。

(1)首相はゴルフの際に、日米の新たな貿易協定交渉について、夏の参院選前は農業分野などでの譲歩が難しいいとして配慮を求め、トランプ氏も理解を示した。
(2)トランプ氏は、26日午後のツイッター投稿で、貿易協定交渉について「大きく前進している。多くのことは7月の選挙後まで待つ」とし、脳産品の市場開放などの具体的な要求を参院選後とする考えを表明した。

 問題点はふたつある。ひとつは、なぜ貿易交渉を参院選後にするか。せっかく日本に来たのに、わざわざ交渉を避けたのはなぜか。
 (1)に「参院選前は農業分野などでの譲歩が難しい」という表現がある。これは逆に読めば「参院選後は農業分野(などで)の譲歩は簡単だ」ということだ。言い換えると、参院選で勝利してしまえば、自民党(安倍)の支持母体である農業関係者の票を気にする必要がないから、いくらでも譲歩します。選挙前は、農業関係者の票離れが心配だから、譲歩した貿易協定は結べない、ということ。
 農業関係者を完全にばかにしている。
 「日本の農業を守るから参院選では自民党に投票して」と呼びかけておいて、参院選が終われば「日米関係は何よりも重要なので、農業関係者にはがまんしてもらいたい」と言うことになる、と「事前予告」している。
 (2)の部分のいちばんの問題点は、トランプの「7月の選挙後」ということばである。(1)には「夏の参院選」ということばがあるが、トランプはこれを「7月の選挙」と言いなおしていることになる。参院選の日程はまだ明確になっていない。けれどトランプは「7月の選挙」と言っている。トランプが日程を決められるわけではないから(安倍のことだから、トランプの言いなりになって日本の選挙日程を決めているのかもしれないが)、これは安倍がゴルフの際に「7月の参院選前は」と言ったということだろう。国会や国民よりも、トランプを優先していることになる。こんな非常識な首相がいていいのか。 またこの「7月の選挙後」という表現には、もうひとつ、問題がある。「外交」(ゴルフ外交)がどういうものか、私は知らないが、外交だから「オフレコ」の部分あるだろう。水面下の交渉ということもあるだろう。しかし、そういう交渉を進めたときの「基本」は、これは「オフレコだから、外には絶対に漏らさないでくれ」と念押しをするのがふつうなのではないのか。つまり、安倍が「7月の参院選前は譲歩がむずかしい」と言ったのだとしても、参院選の日程はまだ決まっていないので「7月」という表現はつかわないでほしいとクギをさすべきなのに、それをしなかった、ということだ。
 これで思い出すのは2016年の日露首脳会談の直前のことである。このとき、日露首脳会談の成果(北方四島の返還に道筋を付ける)を掲げて衆院選を強行するといううわさがあった。ラブロフが「ロシアへの経済協力を言ってきたのは安倍であって、ロシアが経済協力を申し込んだのではない」という「外交の内幕」を暴露した。つまり、「ロシアが経済協力を申し込んだのではないから、見返りに北方四島を返すというようなことはありえない」と言外に言ってしまった。岸田が交渉過程で、よほどラブロフを怒らせたのだろう。そうでもしないかぎり、外交の「内幕」は口にしない。あらゆる協定が終わってから、「実はこうでした」というのが外交の基本だろう。
 安倍は「外交が得意」と言われているが、単に外国に行って金をばらまく約束をし、歓迎されるというだけだろう。野党は外交の責任をとれないから、どうしても与党主導になる。単に安倍がメディアに露出する機会が増えるというだけで、「外交が得意」ということになっているだけだ。
 この「外交の基本を知らない安倍」について、読売新聞は、3面でこう書いている。

 トランプ氏はツイッターで、まだ日程が決まっていない参院選が「7月」に行われると投稿した。首相がゴルフの合間などに、参院選の日程について言及したのではないかとの憶測を呼びそうだ。

 これはなんとも「甘い」追及である。「憶測を呼びそうだ」ではなく、それに気づいたのなら、それを問題にして、そのことを読者にわかるように追及するのが新聞の仕事のはずだ。社会的な議論にしていくのが新聞の仕事だ。これが問題になることは、わかっていました、という「証拠」を残しておけば言いということではない。
 トランプはどうやって「7月」ということばを手にしたのか。安倍が「7月の参院選」と言ったのだとしたら、なぜ、国会(国民)に知らせる前に、トランプに言ったのか。いま開かれている国会との関係もあるはずだ。国会をどうするつもりなのか。開かれていない予算委をどうするのか。憲法審査会をどうするのか。
 トランプをどんなふうにもてなしたか、などよりも重要なはずだ。










#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位 
 


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