15 黒を分類する | 詩はどこにあるか

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15 黒を分類する



   1
川がひらかれる
血のようにくろく流れていたもの
ビルを隈取り街の底部をつらぬいていたものが
朝の光に切り開かれる

(だがほんとうだろうか 昨日私は
夜が都市の内部を切り開くのを見た
黒いものが形の殻をとかし
内臓のそこで光っているものを
浮かびあがられる時間を歩いた)

   2
川がくろくなる
はねかえされた真昼の光が
疲労に沈む目を射抜くとき
周辺がくろくなる
光と同じ垂直な色に

    2′
日がかげる
やなぎのみどりが一瞬ふかくなる
海のように なつかしい
水のように
(橋の上から
私の上を あるいは私の下を
流れる水を見た
あるいは水が含むくろによって
なめらかになった影を
透明な形を)

   3
日が西へ動いていく
川は光にとざされる

窒息しそうになった内部は
つよく呼吸する
空にひそむ金の翳りを
熱を放射するアスファルトの気分のわるいにおいを
薔薇の花弁をながれる静脈を
一つを分類するとき周辺に集まってくるすべての黒を
美術館の肖像画を縁取る硬い線を
(存在をほどくように)

川はかえっていく
ぬれた黒
際限のないひろがり



(アルメ237 、19855年11月10日)