5 屋上で | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

詩の感想・批評や映画の感想、美術の感想、政治問題などを思いつくままに書いています。

屋上で



どこで飼っているのだろうか
鳩が真昼の空を広がっていく
広寿山禅寺あたりでひるがえり
旋回をくりかえす
冬の光が反射して白い
「少し増えたようだ」
髪がバサバサあおられる
両手をズボンのポケットにつっこんで
猫背の棒になって
「円の大きさは鳩の数に正比例する
ように思われる」
頭のなかをみつめている
視野は東西南北に開かれるのに
中心が気になって動けない
「まるで、あれだね」
風に背を向けて
たばこに火をつけようとするが
うまくいかない
ことばも発火しない
「まるで、なんだい」
男はたばこを捨てる
「忘れてしまったよ」
白いチョークが隅へ転がっていく
大きくなりすぎた輪の
遠心力にはじかれた鳩のように






(アルメ231、1985年02月10日)