4 古本市 | 詩はどこにあるか

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4 古本市



川を越えてカーブする電車を追ってみる
右に傾いて赤い色が消える
音は遅れてビルの間を風になってやってくる
「色と音 空気のなかに存在するズレが
街の層を剥がしていく」
見上げればアルミニウムを割ったような銀が散乱する空だ
イチョウの葉も厚みを失い金箔細工の軽さで降ってくる
自然はすべて鉱物の冷たさで輝いている
人間だけが生ぐさい
自分を剥がすことばを探しに古本市へやってくる
ふれると皮膚が剥がれるような冷たいことばが欲しい
もっともっと硬く冷たいことばが



(アルメ230、1984年12月25日)