ブラッドリー・クーパー監督「アリー スター誕生」(★★★★★) | 詩はどこにあるか

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ブラッドリー・クーパー監督「アリー スター誕生」(★★★★★)

監督 ブラッドリー・クーパー 出演 ブラッドリー・クーパー、レディー・ガガ

 午前10時の映画祭「裸の島」を見る予定だったのだが、すでに上映が終了していた。それで、たまたま「アリー スター誕生」を見たのだが、これはたいへんな「拾い物」であった。
 予想以上にすばらしかった。
 ブラッドリー・クーパーは、この作品が初監督。監督術はクリント・イーストウッドから学んだというが、まさにイーストウッドのような手際のよさ。あらゆるシーンがしつこくない。感情をぱっと動かし、そこで断ち切ってしまう。余分に見せない。
 クライマックスはどこか、というと、レディー・ガガがスターになる瞬間。ブラッドリー・クーパーに誘われて、ステージで歌い始める。その歌声に観客が熱狂する。このときのレディー・ガガの不安と驚きと喜び。それに寄り添うブラッドリー・クーパー。これをステージの上から観客を背景に捉えている。まるで自分がブラッドリー・クーパーかレディー・ガガになって歌っている気分だ。観客の熱狂にあおられて、ふたりは歌の世界に没頭していく。観客に聞かせているというよりも、観客が見ている前で、ただ自分の世界に没頭していく。まるでセックスである。他人なんか気にしない。いまが幸せ。そういうエクスタシーの瞬間がある。
 レディー・ガガは歌手だから歌がうまいのは当たり前だが、ブラッドリー・クーパーもうまい。これにも感心した。
 それにしても、と思うのは。
 映画はやっぱり映像と音楽なのだ。セリフなんかは関係ないなあ。
 すでに知り尽くされたストーリーだから、ストーリーなんかに観客は感動しない。ストーリーをつくりだす映像と音楽にしか注目しない。そうわかっていて、オリジナルの音楽と映像をぶつけてくる。凄腕である。
 思えばイーストウッドは「センチメンタル・アドベンジャー」では歌手を演じ、「バード」や「ジャージー・ボーイズ」もつくっている。映像と音楽を親和させることに熟達している。
 「アメリカン・スナイパー」で一緒に仕事をするだけで、イーストウッドの最良の部分をすべて吸収している。ブラッドリー・クーパーは、イーストウッドの後継者になったといえる。どこまで世界を広げていくか、とても楽しみである。「ハングオーバー!」が最初に見た映画だが、そのときは軽い美形役者くらいにしか思わなかったのだが。あ、軽い美形役者のロバート・レッドフォードも初監督「オージナリ・ピープル」でアカデミー賞作品賞と監督賞をとっていたなあ。ブラッドリー・クーパーもとれるかな? 期待したい。応援したい。

(2018年年12月12日、中洲大洋スクリーン1)

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