それは
ひよどりの巣から手づかみにした卵のような
一語だつた
「それ」とは何か。嵯峨にはわかっているが、読者にはわからない。
三行目は、こうつづく。
それつきり女は海を越えて帰つていつた
「手づかみ」と「女」を手がかりにすると、「それ」は「乳房」かもしれない。「巣」「卵」も、そう感じさせる。
これを「一語」と呼んでいる。
どんな「一語」なのか。まだ、ことばになっていない。でも、ことばが、その瞬間に動いた。ことばになろうとした。三行目の一字下げが、ことばにならない一呼吸をあらわしている。
二連目に、
日記には何も書いてない
とある。
書かなくても、嵯峨には、わかる。
ことば、だったと。ことばとしか呼べないものだった、と。
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