嵯峨信之を読む(21) | 詩はどこにあるか

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21 巴里祭

それは
ひよどりの巣から手づかみにした卵のような
 一語だつた

 「それ」とは何か。嵯峨にはわかっているが、読者にはわからない。
 三行目は、こうつづく。

それつきり女は海を越えて帰つていつた

 「手づかみ」と「女」を手がかりにすると、「それ」は「乳房」かもしれない。「巣」「卵」も、そう感じさせる。
 これを「一語」と呼んでいる。
 どんな「一語」なのか。まだ、ことばになっていない。でも、ことばが、その瞬間に動いた。ことばになろうとした。三行目の一字下げが、ことばにならない一呼吸をあらわしている。
 二連目に、

日記には何も書いてない

 とある。
 書かなくても、嵯峨には、わかる。
 ことば、だったと。ことばとしか呼べないものだった、と。


*

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