千人のオフィーリア(メモ27) | 詩はどこにあるか

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千人のオフィーリア(メモ27)

私は帽子。日食の日の、麦わらの。
覚えているかしら。
髪をほどいたら
編み目の隙間から無数に散らばった、
三日月の形の太陽。
         天のひとつが地上では無数にくだける。
--海の底の、貝の夢のよう。
オフィーリアが言って、
--私が見えるようにしたのよ
と教えてあげた私は帽子。麦わらの。
--ほら、風のように揺らしながら数えるのよ。
  十八まで数えれば恋の年。
  じょうずに足せば三十七、

オフィーリア、オフィーリア。
あのときから離れたことなど一度もなかったのに、
オフィーリア、どこを流れているの?
私は帽子、リボンのほどけた帽子。麦わらの。
リボンの先はオフィーリアにとどくかしら。
菫色のリボンは
あの日の記念。
四阿の床に三日月の太陽が散らばり、
まわりが菫色になった、
腰のリボンも。
オフィーリア、
蝶結びをほどいて、
帽子に結びなおしたのは誰?

遠い野で菫の上に椅子が倒れる。