千人のオフィーリア(メモ22)
オフィーリアが「欠伸」という文字を知ったとき、
廊下の窓から教室を覗いたオ(ハ?)ムレットと目が合った。
まさか帰ってくるなんて!
ただひとり帰って来たナントカという
あの男みたい。
「シチューは煮えたかしら」と鍋をかき回した後に、
過去を思い出したみたいに「欠伸した」。
「あくび」というルビが振ってあって、
誘われるように口を開けて
まさか。
欠伸を追いかけて滲んでくる涙。
とめることができない。
できることなら、
乙女の喜びの涙と思ってくれない?
オフィーリアは期待するけれど、
「ちょっと見ないうちババアになったなあ」という目つきだけ残して
目を逸らした
口の端から垂れ下がる涎を源とする川を流れるオフィーリアが、
二十三人目だったときの、だれも同情してくれない
思い出を思い出すために
二十四人目のオフィーリアになったの。
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詩集「改行」(2016年09月25日発行)、残部僅少。
1000円(送料込み/料金後払い)。
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