破棄されたの詩のための注釈(31) | 詩はどこにあるか

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破棄されたの詩のための注釈(31)

テーブルの片隅に集められたのは「ぬれている」ということばと「水面の青」。「水面は正午の光で青くぬれている」ということばと、「ボートからはみだした影が水面で黒く輝く」ということばが、砕けながら入り乱れた。四月の正午、風は南から吹いた。

水に触れる手は、何を考えて模倣するのか。砕けるものを集める「感覚」ということばは「私は私を見て(あなたはあなたを見ないで)」という中途半端なことばを半ば所有し、半ば放棄している。想像力は、網膜のなかで完成する安直を拒否する。

そのように段落は変更された。

新しい単語はつづかず、スターバックスの外のテーブルの上に雨が降り、「ぬれている」ということばは水面から「青」をはがしていく。灰色の粗い粒子が現像しそこねた写真のように、水のなかから浮いてくる。「ボートの横」では、水に映った杭の色という問題が残される。







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