最終の地下鉄が走り去ったあと、
遅れてきた一本が
仕方がないというように動き出す。
吊り輪が白い光のなかで
さらに白くなっている。
通路に空き缶が転がる。
飲み残しの液体を
だらしなく漏らしながら
座席の下の鉄板にぶつかり
押し返され、方向を変える。
進行方向にまっすぐに、
連結部分まで行って、
また戻る。扉のところで
革靴でしずかにけられる。
何もかもわかっているさ。
それから、
誰とも口をきくものかと決めた
未熟な若者のように、
泣きそうになる。
回送列車がすれ違うとき、
はげしく揺れる。
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