空き缶 | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

詩の感想・批評や映画の感想、美術の感想、政治問題などを思いつくままに書いています。

空き缶

最終の地下鉄が走り去ったあと、
遅れてきた一本が
仕方がないというように動き出す。
吊り輪が白い光のなかで
さらに白くなっている。

通路に空き缶が転がる。
飲み残しの液体を
だらしなく漏らしながら
座席の下の鉄板にぶつかり
押し返され、方向を変える。

進行方向にまっすぐに、
連結部分まで行って、
また戻る。扉のところで
革靴でしずかにけられる。

何もかもわかっているさ。

それから、
誰とも口をきくものかと決めた
未熟な若者のように、
泣きそうになる。
回送列車がすれ違うとき、
はげしく揺れる。








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