「雨」
青銅をぬらした、噴水をぬらした、
引用しながら、1行目の「南風は柔い女神をもたらした。」にすればよかったかなあ、「南風(なんぷう)」という音が、そのまま「柔い」という用言と結びつく。「南風は柔い」でひとつのイメージになりながら音も美しい。書き直そうかなあ、と迷っているのだが。
でも……。
昔を振り返ってみると、私は「噴水をぬらした、」に驚いた。噴水は水。ぬれている。なぜ、ぬれるのか。雨にぬれる前に、噴水自体の水にぬれている。わざわざ、「ぬれる」という必要がない。
当然のことだが、そのころ私はギリシャを知らない。しかし、ギリシャが地中海の明るい国と思っている。そして、この雨は、太陽が輝きながらふる「晴れ雨」のようなものだと感じた。
矛盾--それが驚きとなってあらわれる。
「青銅」と「噴水」の音の対比は、「南風」ほどの驚きはないのだが。