ある本のなかで、 | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

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ある本のなかで、

ある本のなかで、
「互いに何マイル隔てて眠っているだろうか」という行に出会った。
闇は発光する黒の透明。

そのとき、
ことばは海へ流れる川になって月を浮かべた。
そのとき、
ことばは公園のブランコが砂場に影を落としていた、
という描写になって動いていくのがわかった。

マイル、という距離がわからない。
わからないものはみんな美しい。

わからないからことばはわかっているもので埋めていく。
遠い距離をつないでゆく。
だれかが窓のカーテンを閉めた。
そのときその部屋では枯れかけた花が最後の輝きを思い出している。
あるいは、そのことばは消していく細い鉛筆の線。
見せ消ち、といういたずら。

そのときことばは、
書きかけの青いインク、
クレーの絵のなかには青がないけれど。
そのときことばは、
オフィーリアの組んだ両手。

眠る互いのあいだに、