九月の雨に、
昨夜の名残のようにこまかな雨が降っている。
フクロウの森の梢から風が吹くと
群がる集まる雨と吹き飛ばされてしまう雨があって、
朝の光の陰影を刺戟するので何か輝きだすものがあるような感じだ。
犬が歩くところには桜の古い落葉があって、
いつから積み重なっているかわからないが、幾重にも重なって、
茶色と紫と黒をまぜたような色にぬれている。
私の知らないうちに数えきれない日々が
葉っぱたちのなかに静かに静かにつづいていたのだ。
その時間の上に、九月の雨にぬれて
あたらしい桜の葉が二枚、三枚、散らばるように落ちている。
かすかに黄色を帯びた葉は
暗い夜をわたってきた舟のように見えた。