谷川俊太郎『こころ』(19)(朝日新聞出版、2013年06月30日発行)
「心の皺」は、珍しく谷川自信を描いているように見える。
セピア色の写真の中の三歳の私
母の膝で笑っている
この子と喜寿の私が同一人物?
という書き出しである。「心臓に毛が生えたぶん/頭からは毛がなくなって」と常套句の笑いを経て、顔の皺、脳の皺とことばは動いて行って、
もみくちゃにされ丸められ
磨く暇もなかった心
芯にはいったい何があるのか
最終行に私は驚く。皺と言うのは確かに「表面」に刻まれる。その表面の反対が「芯」になるのかなあ。そうかもしれないけれど、こころの「芯」があるとは思ったことがなかった。こころにあるのは「底」だよなあ。こころの水表の反対はこころの水底・・・
あるいはこころの中心、真ん中。それは一点だね。
でも谷川は「芯」という。棒みたいなのかな。
心棒?
辛抱?
谷川って、いろいろ辛抱して生きてきたのか・・・
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