改行を繰り返して(往復詩3) | 詩はどこにあるか

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改行を繰り返して    谷内修三

温めたミルクの薄皮が唇にはりついてくる(のを
とろうとして動く舌の(舌は、
いいかけたことばを、いわないことで、なぞってみるようで
(と、わたしはうつろな改行を繰り返して。(もっと改行しないと、

ガラス窓のなかに雨がとじこめられる音が暗くなる(のに
追いつけない音の(喉の、と書き直す指の(指は、
つめたく乱れる余白。
(と、こんなところで植物的な句点を打ち込み、(装飾的に、

--絵の具が足りなくなって、(ほんとうのことだよ。
筆の荒れた毛先の、さらに荒らして、かすれたままの木の枝を描いた。
(と、つまらない図画の(具象はふるえるように
                      抽象にまぎれ、

耳の縁で(狭く(ナボコフのごとくふるえている(のは(あおく透
きとおった、何かであってはならない(と、(あるいは
ひきはがされた鏡へひきかえすのではなく、
(と、わたしはうつろな改行を繰り返して。(もっと改行しないと、

                              (2011年11月18日)





八柳李花さんとの往復詩。番号の(3)は3作品目。奇数が谷内、偶数が八柳さん。八柳さんの作品はフェイスブック「象形文字編集室」に往復詩の形式で掲載。単独の形では八柳さんのサイトにアップされています。とりあえず各10回の予定で始めました。