監督 ケヴィン・マクドナルド 出演 ラッセル・クロウ、ベン・アフレック、ヘレン・ミレン
事件を追う新聞記者(ラッセル・クロウ)がきわめて紋切り型。ジャンクフードを食い散らし、だらしない体型、だらしない格好。けれどもニュースに対する臭覚だけは鋭い。その彼が、議員スタッフ(女性)の死、その背後にある秘密を探っていく――というストーリー。これはもう、ほんとうにストーリーだけを追い掛ける映画。わざと「背後」がわからないように、わからないように、わからないように、怪しい関係を説明しつづける。
こういうストーリーの鉄則は、最初は怪しくない人間が一番怪しい。で、そのとおりの展開。アメリカの軍事産業が登場し、巨大な金が動いている、ということが説明されるけれど、そのとき「一般人」が巨大と感じる金額なんて、金を操っている人間には小さい額。日本でも、金丸は「たかが5 億円もらって何が悪い」という態度だったが、それは蔭ではもっと大きい額が動いているということだろう。
見どころは、冒頭近くのラッセル・クロウのジャンクフードを食い漁るシーンが、そのまま体形にあらわれているということくらいだろう。もともと肥満型の俳優なのだろうけれど、時代遅れの髪型で、演技をしたつもりになっている。これは議員を演じるベン・アフレック、新聞社の編集長のヘレン・ミレンも同じ。全員が「紋切り型」を「紋切り型」のまま演じている。俳優はどこまで「紋切り型」を演じることができるか。それを味わうための映画かしれない。
クリント・イーストウッドが「グラン・トリノ」のラストで「ダーティ・ハリー」の格好を演じて見せてファンを喜ばせたが、同じ「紋切り型」でも、こんなにも違う。