ロン・ハワード監督「天使と悪魔」(★★★) | 詩はどこにあるか

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監督 ロン・ハワード 出演 トム・ハンクス、アィエレット・ゾラー、ユアン・マクレガー、ステラン・スカルスガルド

 前作(?)の「ダビンチ・コード」はさんざんな映画だった。映画なのに、ひたすら「文字」を映している。まるで本を読んでいる感じだった。その印象が強すぎて、今回の映画の採点は甘くなっているかもしれない。前作ほど、ひどくない。その「ひどくない」がふつうの映画という感じになる。(ほんとうなら★★くらいの映画だろう。)
 今回も「文字」がカギをにぎっているが、「土」「水」「火」「空気」というだれにでもわかることばなので、「文字」が重要という意識があまりない。それがよかったのだろう。
 「文字」、しかも「鏡文字」の一種、左右対称というキーも、最後の瞬間に、うまくいかされている。ユアン・マクレガーの胸に刻印される文字が、天地が逆になる。それはなぜ? この瞬間だれが犯人かわかるのだが、その処理が簡潔なので、なかなかいい。あとで、その瞬間に犯人探しのカギがあった--というような、うるさい「解説」がないのも、とてもいい。(小説には、その部分の解説があるかもしれない。トム・ハンクスが、「あそこで気がつくべきだった」というような反省?として、ひとことくらい漏らしているかもしれない。映画よりは、はるかにていねいに、たぶん一番ていねいに描写されているだろうと思う。)
 映像として見るべき部分はあまりなく、見せ場の「反物質」の爆発と、その影響などあまりにもばかばかしいところがある。真上から爆風がくるのにパラシュートがなんの役に立つ?というひどいひどい矛盾がある。小説では、その矛盾は、まあ、目立たないだろうけれど、映像では「嘘」がみえすいてしまう。「反物質」の爆発自体が、「ザ・エンド・オブ・デイズ」の核爆発のきのこ雲を背景にしたキスシーンと同じようにひどいけれど……。
 映像として見せ場がない部分は、ひたすらローマ市内を移動することでごまかしている。改修中の聖堂や地図といった小道具で、「意識」をかきまぜたり、整理したりというのもいいし、最初のトム・ハンクスのプールの水泳(吹き替え、だね)の伏線も無理がない。前作の評判がよくなかった(?)ので、ずいぶん改良しようとした感じがする映画ではあった。



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