詩はどこにあるか(62) | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

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荒川洋治「心理」(みすず書房)

 「あからしま風」。110ページ、7-9行。

被害者家族の演説はことばも磨かれて
聞くものに
休息が必要になってきた

 「磨かれたことば」と「休息」の対比。
 「磨かれたことば」は人をひきつける。聞く人(読む人)の意識を、ことばを発する人の精神の高み、精神の到達点へと引き込む。
 荒川はそうした「磨き」を警戒する。

 「磨き」の完成度ではなく、「間」(休息)を取り込む。
 精神の高みへ読者を引っ張るのではなく、その手前で一息つけさせる。読者は、一息つきながら、高みを想像する。

 「高み」を想像させることばの運動。そこに荒川の「詩」がある。