斎藤茂吉『万葉秀歌』(7)(岩波書店、1980年、06月25日、第58刷発行)
ささなみの志賀の辛崎幸くあれど大宮人の船待ちかねつ 柿本人麻呂
三句目、字余りなのに、字余りの感じがしない。「しがのからさき、さきくあれど」と「さき」が繰り返され、早口ことばかしり取りのようにのように「さき」の音がのみこまれていく。音の加速は、「ささなみ」の「さ」の重なりからはじまり、「さき・さき」で頂点に達するが、その加速する音を「ど」という濁音でおさえる感じもいいなあ。
山川もよりて奉ふる神ながらたぎつ河内に船出するかも 柿本人麻呂
「か」の音が美しい。途中「が行」鼻濁音が、その音に陰影を与える。
英虞の浦に船乗りすらむをとめ等が珠裳の裾に潮満つらむか 柿本人麻呂
「らむ・らむ」。よく読むと「らむ・ら・らむ」。いまなら「らん・ららん」という感じかなあ。音が弾む。「をとめ」の明るさが目に浮かぶ。最後の「か」は推測や疑問の「か」なんだろうけれど、「潮満つらむ」で終わると「む」の音が重い。「か」という音で解放されるところが、「ラン・ララン」の響きを引き立てている。
私は、あえて「らん・ららん」と読んだけれど……万葉の「ま行」「な行」の音は、深く強く響いてくる。ゆったりしていて、豊かで、同時に、非常になめらかだ。私たちとは違う発音をしていたのかなあ。
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