ペロシのことばと読売新聞の書き方 | 詩はどこにあるか

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 2022年08月06日の読売新聞(西部版、14版)。1面に「日米、台湾情勢で連携/首相、ペロシ氏と会談 中国演習批判」という記事が書いていある。ペロシの台湾訪問の続報。
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 岸田首相は5日、来日中のナンシー・ペロシ米下院議長と首相公邸で会談した。軍事的な緊張が高まっている台湾情勢をめぐり、日米の連携を確認した。首相は、中国による台湾周辺での大規模軍事演習を「地域や国際社会の平和と安定に深刻な影響を与える」と批判した。
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 中国が台湾周辺での大規模軍事演習をしたのは事実だ。そして日本のEEZ内にミサイル(?)が落下したのも事実だ。しかし、ここにはなぜ中国が台湾周辺で軍事演習をしたのか、その理由が書かれていない。私が何度か問題にしている「時系列」でいえば、「時系列」が省略されて、中国が突然一方的に軍事演習をしたように書かれている。
 中国の軍事演習はペロシの台湾訪問が原因だ。ペロシが台湾を訪問しなかったら、こういうことは起きなかった。
 ペロシは台湾訪問について、こう語っている。(番号は、私がつけた。)
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①ペロシ氏は議員団でアジアを歴訪しており、今月2~3日に台湾を訪問した。首相との会談後、東京都内の在日米大使館で記者会見し、「中国は台湾を孤立させようとしている。我々の台湾との友情は強固だ」と強調した。
②台湾訪問に関しては「台湾やアジアの現状変更が目的ではない」と説明。中国が、世界保健機関(WHO)など国際機関から台湾の締め出しを進めていることなどを挙げ、「中国は台湾の訪問や参加を妨げるだろうが、我々の訪問を阻止して台湾を孤立させることはできない」とけん制した。
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 この順序(時系列)で発言したのかどうかわからないが、①の「台湾の孤立化」とはなにか。②で「中国が、世界保健機関(WHO)など国際機関から台湾の締め出しを進めている」と言っているが、これか。もしそうなら、それは国際機関でアメリカが発言すればいいことだ。台湾を訪問する必要はない。
 さらに「中国は台湾の訪問や参加を妨げるだろうが、我々の訪問を阻止して台湾を孤立させることはできない」には、書かれていないことがある。「我々の訪問」とは具体的には誰のことか。たとえば日本の衆院議長のことか。ヨーロッパ諸国(NATO加盟国の首脳)のことか。主語が明示されているようで、明示されていない。もっと問題なのは、その訪問方法である。ペロシのように、軍用機(たぶん)で台湾に直接乗り込むのか。
 立場を変えて読んでみるといい。日本を例にして考えてみるといい。たとえば、ロシアや中国が、沖縄の米軍基地が沖縄県民を苦しめているという認識を公言し、米軍基地の撤去を求める沖縄県民と連携することを目的に、ロシア、中国の首脳が「軍用機」で沖縄を訪問したら、いったいどうなるのか。大問題になるだろう。
 しかもペロシ(あるいはアメリカ政府)は、「一つの中国」を認めていいる。それなのに①の「中国は台湾を孤立させようとしている。我々の台湾との友情は強固だ」というようなことを言うのは大問題だろう。(①の発言は、台湾でおこなわれたものではないが。)中国は台湾を孤立化、さらには独立させようとはしていない。
 「中国が台湾を孤立させようとしている」のではなく、ペロシが台湾を中国から「孤立/独立」させようとしている。そして、中国を、戦争にむけてあおっている。挑発している。
 もし中国と台湾が「統合」して、ほんとうの「一つの国」になったとき、困るのは誰なのか。台湾の住民か。何度でも書くが、中国人の基本的な姿勢は、金がもうかるならそれがいちばん、である。中国に統合されることでいまよりも金もうけができるなら、それでかまわないと考えるだろう。「金持ち」は、なんだかんだといって「自由」である。それが「資本(自由)主義」の根本。日本でも、貧乏人は「不自由」だけれど、金持ち(資本家)は「自由」でしょ? 政治家と連携して、なんでもできるでしょ? 統一教会は、平気で悪徳商法でもうけているでしょ? 
 共産主義の国になったら「金持ち」は「自由」に生活できない、ということはない。中国にもロシアにも「大富豪」はいる。彼らは「自由」だ。金さえあればなんでもできる、「権力」の一部になれる、というのは、もう「世界共通」の生き方である。それを私はいいとは思わないが、それが現実である。私は年金生活の貧乏人だが、世界をそんなふうに見ている。
 「貧乏人」でもないペロシが、では、何を考えているのか。「大金持ち」はまず自分の「金」を考える。貧乏人のことなんか考えたりはしない。どうやったら、もっと金もうけができるか。いま、世界経済において中国が占める部分は大きい。世界中で中国製品が売られている。私のスマートフォンは中国製だ。スペインの友人の何人かもおなじメーカーのものをつかっている。安いから、売れるのだ。中国製品が売れるということは、アメリカ製品が売れないということだ。(アップル製品は売れているが。)
 その中国に対して、なんらかの「抑圧」をかけることを考えたとき、アメリカは台湾を必要としているのだ。台湾の軍事基地を強化して、中国が「一つ」になることを阻止し続ける。それだけが狙いである。中国以上に、アメリカが台湾を必要としている。
 私のような「見方」は、アジア諸国では「常識」になっているように思える。
 これはASEAN関連会議のニュースを読めばわかる。読売新聞は、外電面で「米中巡り各国温度差」という見出しで内容を伝えている。見出しはさらに「マレーシア『双方の友人でいたい』」「カンボジア 台湾や香港『内政問題』」とつづく。ペロシが台湾を訪問したよかった、と発言している国はない。(読売新聞は、一覧表をつけている。https://www.yomiuri.co.jp/pluralphoto/20220806-OYT1I50025/)
 台湾問題を、米中の対立問題と見ていることがわかる。

 アジアの一国であるはずの日本は、しかし、まるでアジアの国ではないかのように、ひたすらアメリカの言うがままにしたがっている。ペロシに対して、どんな「疑問」も投げかけない。アメリカと一緒になって、中国と戦争をすれば金もうけができると考えている人間が、読売新聞の記者の中にいるということだろう。そして、その「見方」を読売新聞は正しいと言うために、情報操作しているということだろう。日本はアジアの国であるということろから、世界を見直す必要がある。連携すべきなのは、隣国の中国、韓国であり、アジアの諸国なのだ。10年先には、日本人は中国へ出稼ぎに行くしかないのである。日本の経済力が中国を上回るということは、今後、絶対にない。