谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(10) | 詩はどこにあるか

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谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(10)

(分別の罪を)

分別の
罪を
言葉は
負う

無名に
色はあるか
透明には?

空に満ちる
自然は
無尽

なおヒトは
語と語で
色を
切り分ける

 「分別(する)」は「切り分ける」と言いなおされ、「言葉」は「語」と言いなおされる。言い直しは「罪」のひとつか。地上の罪はそうやって「無尽」に近づくのか。「語」がヒトを「切り分ける」こともあるだろう。

 

 

 


(書いた言葉を)

書いた言葉を
読む
私から離れる
意味

私有できないのに
負う

語が
語に絡んで

行と行の
間も

かな?

 私がことばを書くとき、ことばが私を書く。私がことばを読むとき、ことばが私を読む。私が谷川の詩を読むとき、谷川の詩が私を読む。どう読んだか、谷川も私も知らない。ことばの肉体だけが知っている。

 

 

 

 

 

(文字で)

文字で
読みたくない
声で
聞きたくない

言葉の
意味から
滲み出すものを
沈黙に探る

山の
無意味の
静けさ

死に向かう
人間の
無言

 「静けさ」と「無言」は違う。無言は外面的には静かだが、内面は音に満ちている。山にはいろいろな音があるが、内面は静かである。内面とつながるものしか音にならないと知っているからだ。言う必要がない。