谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(3) | 詩はどこにあるか

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谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(3)

(老いて一日は)

 

老いて
一日は

朝から
昼へ
己れに
躓き

昼から
夕へ
散らばる

幻の
明日の
星影


 動詞はふたつ。「躓き(く)」と「散らばる」。躓くのは肉体である。しかし、肉体の動きはどこかでこころにつながる。そのとき肉体は「散らばる」ことはないが、こころは「散らばる」。肉体を少し離れて。

 

 

 


(じっと)

じっとしていると
今が
音楽とともに
遠ざかる

時間が駆け
時は
うずくまる

音楽の額縁で
世界は
名画

美に
涙して
醜に
耐える

 「駆けて」「遠ざかる」とき「うずくまる」ものがある。動かない。「うずくまる」は「涙して」「耐える」に似ているか。「うずくまる」のは何だろう。音楽からこぼれた沈黙だろうか。