やはりキーワードは「免疫抑制解除」です!こいつで、免疫細胞療法の成績は良く成りますよ^^
免疫療法最前線 ASCO(米国臨床腫瘍学会)でも注目
がん患者の生存率に影響する「免疫抑制」の最新研究事情
監修●柴田昌彦 埼玉医科大学国際医療センター消化器病センター・消化器腫瘍科教授
取材・文●伊波達也
(2013年10月)
がんに対する免疫療法というと、医療界ではこれまでエビデンス(科学的根拠)の確立されていない未知の領域という認識が支配的だった。
しかし、近年は免疫のメカニズムがさまざまな研究により解明され、
欧米を中心に注目を集めている。
6月に開かれたASCO(米国臨床腫瘍学会)2013では、免疫療法に関する日本人研究者の発表も注目を集めた。
がんにおける“第4の治療”とも表現される免疫療法は、
3大治療(手術、抗がん薬治療、放射線治療)で力尽きた患者が末期状態で受ける治療であるとか、自由診療で高額な医療費がかかるといったイメージが強いのではないだろうか。
医療現場においても、免疫療法に対する認識はあいまいで、その効果を認める医師と懐疑的な意見を持つ医師との間で、見解が分かれているのが実情だ。
そのような状況に近年、変化が現れ始めた。免疫のメカニズムについての研究が進み、欧米の権威ある学会で発表される機会が増えたのだ。免疫療法的なアプローチの中でも、とくに注目されているのが、「免疫抑制」というキーワードだ。
免疫抑制の有無が生存率に影響する
■図1 胃がん患者と健康な人の、免疫抑制細胞の割合の違い

引用ASCO2013 ID3063
今回のASCO2013で、日本人研究グループの発表が話題になった。
研究グループの1人、埼玉医科大学国際医療センター消化器病センター・
消化器腫瘍科教授の柴田昌彦さんは「我々が用意した資料がすぐになくなり、関心の高さを実感しました」と、振り返る。
発表内容は、「骨髄由来の免疫抑制細胞(MDSC)が、がん患者の予後の重要な指標の1つになる」という研究結果だった。
柴田さんはこう説明する。
■図2 胃がん患者(ステージ4)における「免疫抑制細胞」*の量と生存率の関係

引用ASCO2013 ID3063
「MDSCとは、がん細胞を攻撃しようとする人間の免疫機構を妨害する細胞のことです。
今回報告したのは、胃がんの患者さんの体内にある免疫抑制細胞と健常者のそれとの量の比較です。
胃がんの患者さんのほうが、明らかに免疫抑制細胞が増えていました(図1)。
そして、全身で炎症が進んでいるほど免疫抑制細胞の数値は高くなっていました。また、免疫抑制細胞が増える人は、全身の栄養状態も悪く、悪液質や栄養障害で衰弱しやすいこともわかりました」
柴田さんは続ける。
「がんのステージごとの検証では、ステージが進行するほど免疫抑制細胞の
数値は上がっていました。
免疫力を抑え込む免疫抑制細胞が増えるということは、体内に免疫細胞がいくらあっても働けない状況になっていると言えます」
生存率についても、データを示した。
「ステージⅣで、免疫抑制細胞の多い患者さんと少ない患者さんの
2年生存率を比較しました。
免疫抑制細胞の量が多い人のほうが明らかに生存率が悪いという
結果が出ました」(図2)
免疫抑制細胞の数値が高い、つまり、がん患者の免疫力を弱くする
免疫抑制が起こっていると、免疫細胞の数も増えず、
その働きもブロックされてしまうため、治療後の生存率など、
予後が悪くなるということが明らかになったのだ。
柴田さんは、4年ほど前から、大腸がんなど多くの消化器がん種において同様の検証をしており、その結果も、今回発表した胃がんのケースと同様だという。
がん治療は免疫抑制の解除から
がん免疫に関する分野は、ここ10年ぐらいで飛躍的な進歩を遂げてきたが、
その要因は大きく2つある。
1つは、がん細胞を攻撃する免疫細胞(キラーT細胞)の発見で、
もう1つが、今回柴田さんが示したようながん患者の体のなかで起こっている
免疫抑制の解明である。
柴田さんは以前、外来で免疫療法を実施していたが、その効果が思うように
上がらなかった。
そこで、なぜ免疫療法が効かないのかを調べ始めた。探求の結果、がん患者の体の中では、免疫の効き目が悪くなっているのではということにいきついた。
「さまざまな施設で行われていた人工的な免疫細胞増強や、樹状細胞療法、
ペプチドワクチン療法は、その効果が注目されつつも期待どおりの結果が
出ていませんでした。その原因の1つが免疫抑制だったのです。
キラーT細胞は患者さん自身の体のなかに確かに存在しているにもかかわらず、私たちの発表データが示すように、がんの進行に伴って免疫抑制細胞が増えてしまうと、免疫の効き目が抑えられてしまうのです。
今後のがん治療では、免疫抑制細胞を減らし、免疫抑制を解除する治療法を確立していくことが課題と受け止めています」(図3)
■図3 免疫が抑制されてしまう仕組み

免疫抑制を解除する薬剤の研究開発が進む
■図4 ASCO2013で発表された免疫抑制を軽減させる成分の最新研究
| 成分名 |
開発状況 |
ASCO発表の臨床試験 |
| イピリムマブ |
FDA
承認薬 |
進行悪性黒色腫
(メラノーマ) |
| 抗PD-1抗体 |
第Ⅰ相
臨床試験 |
進行腎細胞がん |
| 抗PD-L1抗体 |
第Ⅰ相
臨床試験 |
非小細胞肺がん、メラノーマ、
腎細胞がん、大腸がん、胃がん |
柴田さんの考えを支持するように、免疫抑制を解除すれば、
体内の免疫力を“復活”させることができ、
それによりがん治療成績を上げようという新しい研究が内外で進められている。ASCOでも発表が相次いだ(図4)。
米国では、イピリムマブipilimumab(一般名)という薬が、
皮膚がんのメラノーマ(悪性黒色腫)に対して、FDA(米国食品医薬品局)で
承認されており、本年のASCO2013でも悪性黒色腫患者における最新の臨床データが報告された。
イピリムマブ以外にも、免疫抑制に陥った免疫細胞の機能を回復させる
抗体薬の開発が海外の製薬企業を中心に進められている。
本年のASCOでは、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体について、進行腎がん患者などに効果があることが、相次いで報告された。
さらに日本でも、免疫抑制を解除する薬剤の研究が進んでいるという。
免疫抑制の解除にシイタケ菌糸体
■図5 シイタケ菌糸体の顕微鏡写真

そのような中、日本人に馴染み深いシイタケの成分にも注目が
集まっているという。
国内の研究機関や小林製薬などがシイタケの菌糸体エキス(以下、シイタケ菌糸体、図5)の研究を進め、シイタケ菌糸体を摂取することで、
がん患者の免疫抑制状態が改善されるデータも報告されているという。
「シイタケ菌糸体は作用が柔らかで安全性の面でも期待できる成分です。
また、抗がん薬による白血球の低下、しびれや疼痛などについても、シイタケ菌糸体が軽減する可能性が充分にあります。
さらに調べていくことが必要ですが、抗がん薬と併用して使っていくという利用も考えられるでしょう」
以前、きのこ製剤が化学療法との併用で良い結果が出て、医薬品として承認されたことがあったが、同じように再び脚光を浴びる可能性は充分ありそうだ。
抗がん薬と免疫の関係についても、柴田さんは指摘する。
これまでは、抗がん薬を投与すると免疫が落ちるといわれていたが、
最近では逆の考え方も出てきているという。
「免疫抑制細胞は、一部の抗がん薬で抑えることができることもわかって
きたのです。
たとえば、膵がん、胆道がんで使われるジェムザール*、
食道がんでの標準治療であるFP(5-FU*とシスプラチン*の併用)療法、
さらに胃がんでのTS-1*も、使い方次第で免疫抑制細胞を抑えることが
報告されています。
そこで、以前では考えもされなかった、免疫療法の前に抗がん薬の投与をしようという状況にもなってきています」
さまざまな薬物が免疫にも関連して治療に寄与しているのは明らかだと
柴田さん。
大腸がんでの分子標的薬アバスチン*、アービタックス*などの抗体薬はそもそも免疫を利用した薬である。
以上
非常に素晴らしい最新の「がんを生き抜く」情報でした。
※私も免疫抑制解除のため、3年間「シイタゲンγ(菌糸体)」を
服用しながら、免疫細胞療法を受けています。
免疫細胞療法成功日記クンより