昨日の公演終わり、
帰宅後すぐ山口は愛車にまたがった。
行き先はわからない。
とにかく走りたかった。
風のなすがままに…
夜のハイウェイの加速は疾走感とともに山口の病んだ気持ちを吹き飛ばしていった。
ときおり見える眠ることのない街のイルミネーションは心のプラネタリウムとなり、漆黒の心のなかで輝いていた。
そんな人類の造形物に心を奪われているうちに山口は気付けば古都 大和の国の三笠山、いや現在は若草山というのだろうか、そのような場所にバイクをとめた。
ここへ来るのは二回目だ。
前回はある女の子にぞっこんだったときかな。
いや、今もぞっこんなんだが。
そこは見渡せば満点の星空、人工的街灯の結晶たち、鹿、いちゃつくカップル。
山口は寒さにコゴエタ。
それはそうだ、気付けば薄着でこんなところにきてしまっていたのだから。
そして人は消え気付けば山頂には山口1人。
ああ、ここでも1人ぼっちなのか。
公演終わりということもありポケットに眠っていた光り物をとりだし、
とりとめのない思いを抱え山口は叫んだ。
君に届け。
「若草山から愛と幸せをこめて…しょうにゃん波動砲発射!!ずどどどどどどどぼーん」
すると山びこだろうか、こんな声が返ってきた。
「波動砲返しー!」
山口は1人呟いた。
「あっちゃぴーや」
そうだ、僕は1人じゃないんだ。
山口は若草山で1人涙を流した。
帰路。
山口の気持ちは高揚していた。
愛車は唸りをあげ誰もいない国道をフルスロットルで駆け抜けた。
バリオスから降りた山口は煙草をふかしながら呟いた。
愛菜あいしとーよ。
終わり。
だから俺は小谷じゃなくて愛菜だけなんだからねー(´;ω;`)!!