現代将棋において、
指される機会は無いと言っても過言ではないが、
全ての可能性を潰しておきたいのも人情ではある。
(特に、私のような振り飛車党の場合)
一言に横歩取り△2三歩型と言ってもいくつか種類があり、
今回は△8五歩型について考えてみたい。
初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩
▲3四飛 △8八角成 ▲同 銀 △2五角(下図)
![将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~](https://stat.ameba.jp/user_images/20110807/23/shogi-strategy/d3/a7/p/o0283026311401836323.png?caw=800)
上図が本記事の基本図である。
何故、「現代将棋において、指される機会は無い」と書いたかと言うと、
上図の後手勝率が四割を切っているから。
私も後手の戦法を選ぶ時は、
勝率が四割八分以上見込めるもの、あるいは、
四割八分以上勝てる見込みがある研究があるものを意識する。
(出来ればそれ以上の勝率が欲しいが、
予想勝率が高すぎる戦法は、基本的に検討が甘いという事だ)
上図では、
1.▲3二飛成
2.▲3六飛
の二つがある。順に見ていきたい。
1.▲3二飛成
▲3二飛成 △同 銀 ▲3八銀 △3三銀 ▲1六歩(下図)
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▲3二飛成は以前「この一手」と見られていた手。
「二枚換えは歩ともせよ」の例にもよく用いられている。
(先手は駒損だが、歩得が主張の1つになっている)
上図▲1六歩が現在の主流。
後手の角を狭くする手で、次に▲3五金を狙っている。
この手には
1.△2四歩
2.△1四歩
3.△4四歩
がある。順に見ていきたい。
1-1.△2四歩
△2四歩 ▲3一金 △3四角 ▲2一金 △1二香 ▲1一角
△4二玉 ▲3六歩 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲3三角成
△同 玉 ▲3五歩 △4五角 ▲3四銀 △同 角 ▲同 歩
△4二玉 ▲3三歩成(下図)
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△2四歩には▲3一金が意表の手段だ。
重いようでも、駒得すれば後手の主張が無くなる。
発案は森九段だが、流石に力強い。
歩切れの後手は香車を取られると一大事なので、
△3四角~△1二香と逃がすが、
▲1一角の追撃が厳しく、先手が良い。
上図は王手飛車の筋があるため、と金が取れず、
先手が十分の局面である。
1-2.△1四歩
△1四歩 ▲3五金 △1六角 ▲同 香 △1五歩 ▲同 香
△同 香 ▲1六歩 △同 香 ▲1七歩 △1八歩 ▲1六歩
△1九歩成 ▲6五角 △2九と ▲8三香 △4二飛 ▲8一香成
△2八と ▲7一成香 △同 金(下図)
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△1四歩は激しい変化を含んでおり、案外難しい。
途中△1六角はかなり強引な手段で、
先手を持って明快な手段がありそうなところではある。
上図への進行は定跡化された手順。
以下▲5五桂が有力という説があるが、
△1九飛が厳しく、先手も大変だ。
というわけで、今回新たに考えてみたのは
△1五同香の局面で▲4五角と打つ手(下図)。
![将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~](https://stat.ameba.jp/user_images/20110808/00/shogi-strategy/da/24/p/t02200204_0283026311401975677.png?caw=800)
2三・6三への成りこみを狙いつつ、
△1八香成を防ぐ攻防の一手だ。
△1九飛には、そこで▲1六歩と打てば△1八歩の垂らしが無く、
また、△5二金の受けには、▲2四歩 △同 歩 ▲2二歩で良い。
この場で考えた手なので善悪は分からないが、
駒得しているのでゆっくりした展開を考えたいところではある。
1-3.△4四歩
△4四歩 ▲6五角 △3一飛 ▲5六角 △2二銀 ▲7七銀
△5四歩 ▲4六歩 △5五歩 ▲4七角 △4三角 ▲6八玉
△5二金 ▲7九玉 △3三銀 ▲3六歩 △5三金 ▲3七桂(下図)
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△4四歩には持久戦を目指す。
▲6五角と△3一飛の交換を入れて▲5六角と引くのが急所。
従来定跡とされていた▲3六歩は、
△6四歩 ▲5六角 △2二銀(下図)
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こう進むと▲3七銀と指す事になるが、
桂の活用が難しくなるのがやや不満である。
▲3七桂まで進んだ局面は先手持ち。
以下3五まで銀を捌く事が出来るのも大きい。
2.▲3六飛
△同 角 ▲同 歩 △2七飛 ▲3八銀 △2五飛成 ▲7七銀
△6二銀 ▲2七角 △2二銀 ▲3七桂 △2四龍 ▲4六歩
△8四龍 ▲4五歩 △7四歩 ▲4六角 △7三銀 ▲5八金
△5二金 ▲6六歩 △4一玉 ▲6七金右(下図)
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▲3六飛も有力な着想である。
竜を作って後手有望とも言われていたが、▲2七角が好手。
発案は佐藤九段だとか。
気をつけなくてはいけないのは、後手の棒銀。
飛車と竜のロケット付きなので破壊力がある。
そこで4筋の位を取ってから▲4六角と、棒銀をけん制しておく。
後手の攻めさえ押さえてしまえば▲5六銀まで活用でき、先手十分。
横歩取り △2三歩型1.△8五歩、
いかがだったでしょうか?
勝率四割を切る作戦だけあって、
後手が良くするのは大変、という印象があります。
もっとも、ちょっとした気付きで形勢が変わるのも確か。
流行の中で戦いたくない方はご健闘を。
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