読者の皆様こんにちは。雁木師でございます。今日は書籍をご紹介します。今回は右玉に関する書籍をご紹介します。
改めて白状しますが、私は雁木師とは名乗っているものの、実際の将棋は右玉党です。かつてはフォロワーの方からコメントにて
「右玉師に改名してはどうか?」
と提案されましたが、描く将のペンネームは「雁木師」で活動している以上、名前を変えるのはどうなのかと思い、旧ブログ時代から雁木師を通しています。旧ブログ時代には右玉好きが高じてこんな企画をやっていました。
「この絵はなんだ?」
と思われた方のために説明しますと、2022年4月から1年にわたって
「右玉浪漫飛行」
というストーリー企画を行っていました。内容は、私の右玉の自戦譜を深夜ラジオテイストで解説していくという内容です。詳しくはこのシリーズの第1回目の記事を載せますので、こちらからチェックしてください。
そして今回の右玉書籍の紹介に当たり、1日限りですがこのストーリー企画を復活させることにしました。
この絵の2人のキャラクターは左側はDJ.ミギタマ。右側はアオテツというキャラクターです。詳しくは前述の記事リンクからご確認ください。それでは、右玉浪漫飛行の1日限定復活スペシャルの始まりです。
※なお、このストーリーに出てくる人物、出来事などは一部を除き、架空のものです。実際の人物、出来事などとは一切関係ありません。
DJ.ミギタマ(以下ミ)「DJ.ミギタマの右玉浪漫飛行‼1日限りの復活スペシャル~‼」
♪~(オープニングBGM)
ミ「将棋ファンのみんな、お久しぶりだね‼DJ.ミギタマだ‼」
アオテツ(以下ア)「こんにちは。アシスタントのアオテツです。お久しぶりです」
ミ「やー、アオちゃん。1年ぶりにこのスタジオに帰ってきたね」
ア「ミギタマさん、この1年はどうされていましたか?」
ミ「将棋放浪記を見まくっていた」
ア「え?しばらく仕事がなかったんですか⁉」
ミ「いやいや、仕事はあったよ。コロナ制限が緩和されてから、MCの仕事が増えたね」
ア「ミギタマさんは野球場のスタジアムDJだったんですよね。合間に藤森五段の将棋放浪記を見ていたとか」
ミ「そうなんだよ。いろんな棋士Youtuber見てきたけど、放浪記がためになりやすかったかな。あとイトシンTVも」
ア「藤森五段も伊藤六段もトークの上手な先生ですよね」
ミ「アオちゃんはこの1年何してたの?」
ア「ここ1年は鉄道関連のお仕事が多かったです。ここ半年は北陸新幹線関係の仕事が多くて」
ミ「そういえば敦賀まで延伸できたんだよね。新潟からも石川や福井に行きやすくなったってマミィが言ってたよ」
ア「ところでミギタマさん、この番組が復活した経緯はなんでしょうか?」
ミ「それはDに聞いてみよう。右さん‼」
右田D(以下D)「こんにちは。リスナーの皆さん、お久しぶりです。右玉浪漫飛行ディレクターの右田(みぎた)です。今回の当番組復活のきっかけは、熱烈なLPSAファンの方からのご要望でした」
ミ「LPSA…。たしか日本女子プロ将棋協会だっけ?2月に渡部愛先生が結婚したことは聞いてるけど」
ア「お相手は同じ北海道出身の野月浩貴八段でしたね。で、右田さんに届いたご要望とは?」
D「『昨年9月にLPSAから異色の大型新人がデビューしたのですが、その方が先月右玉の本を出したので、ぜひミギタマさんとアオテツさんの名コンビで紹介してほしい』ということで…」
ミ「噂に聞いたことのある女流棋士だね。たしか、羽生先生の対局の記録係を務めたときにネットがざわついたとか」
ア「磯谷祐維(いそや・ゆい)女流初段ですね。『金髪のギャルが記録係を務めた』ことで衝撃を受けたとは見聞きしています」
D「というわけで、お二人に磯谷先生の本を紹介しながら、右玉の魅力を再確認してほしいということです」
ミ「面白いね‼女流棋士の右玉の本は聞いたことがないから」
ア「ぜひ、やってみましょう」
解説:というわけで、今回紹介するのはこちらの書籍です。
「実戦で学ぶ
対振り右玉の
勝ち方」
でございます。
著者は前述の磯谷祐維女流初段。糸谷哲郎八段の推薦です。ここで、磯谷祐維女流初段をご紹介します。
磯谷女流初段は2003年生まれ、岐阜県各務原市のご出身、同郷には高田明浩五段がいらっしゃいます。奨励会に在籍経験をお持ちも成績不振で退会。その一方でアマチュア時代から実績を数多く積み重ね、女流アマ王位戦に3度、女流アマ名人戦には2度優勝に輝いています。
女流棋士への挑戦は、2023年に関東研修会に再入会し、そのときにB2昇級。8月に規定対局数の48局に満たし女流棋士の資格を獲得して翌月デビューされました。
今年1月に行われた女流YAMADAチャレンジ杯で初めての棋戦優勝。規定により女流初段に昇段されました。LPSA勢の優勝は、渡部愛女流三段以来のことです。現在は、女流順位戦はD級で5勝2敗の成績。今期の女流王座戦では二次予選で山田久美女流四段に勝利し本戦進出を決めています。
師匠は現在棋聖戦五番勝負に挑戦中の山崎隆之八段。本書を読む限りでは、受けも苦にしない棋風です。デビュー当時はその容姿から「異色の大型ルーキー」とも呼ばれました。
ミ「プロフィール写真もすごいけど、アマ時代の実績もすごいね」
ア「同郷の高田明浩五段の書籍もかつて番組で取り上げました。こちらも右玉の本でしたね」
※詳しくはこちらの記事リンクから
ミ「師匠が山ちゃん、本の推薦がDJ.ダニーさん…。森信雄門下の系譜の女流棋士か」
ア「最近は、森信雄七段にとっての孫弟子も続々誕生しています。山崎八段以外では、澤田真吾七段も森本理子女流2級のお師匠ですしね」
解説:ここからは、書籍の内容に入ります。本書はタイトルの通り、対振り飛車における右玉の戦い方を磯谷女流初段の自戦譜から学んでいく内容です。序章+4章構成となっています。では、順に見ていきます。
序章「対振り右玉とは」
右玉の勝ち方、メリット、駒組みのポイントを学んでいく内容です。駒組みのポイントについては3つに分けて解説されています。
第1章「対四間飛車」
四間飛車相手の右玉の戦い方の解説です。掲載されている棋譜は9局。相手は、美濃囲いといったオーソドックスな戦い方はもちろん、四間飛車側の急戦策や、最新の右玉対策の指し方も解説されています。
ミ「四間飛車も振り飛車の王道だから、穴熊や美濃囲い対策は当たり前だけど」
ア「急戦策や最新対策が解説されているのはありがたいですね」
ミ「囲えば満足だけど、囲う前に仕掛けられて苦戦の将棋も見てきたからね」
ア「最後の超速攻策は気になります」
第2章「三間飛車」
三間飛車相手の右玉の戦い方の解説です。こちらも棋譜は9局掲載されています。注目ポイントは三間飛車の左銀の配置。図のような☖4三銀型が三間飛車の基本ですが、☖5三銀型の解説もあります。また、この章でも三間飛車の工夫が書かれています。
ミ「やたらと端角の文字が目立つね」
ア「角の使い方は右玉のカギですね」
ミ「ところで☖4三銀型はちょっと厄介だけど」
ア「銀の進出の防ぎ方も詳しく書かれているので、恐れる必要はありません」
第3章「中飛車」
中飛車相手の右玉の戦い方の解説です。掲載されている棋譜は7局。ゴキゲン中飛車の部類に入る後手中飛車はもちろん、先手中飛車も掲載。内訳は先手中飛車が3局、後手中飛車が4局掲載されています。図は中飛車が5筋から3筋に振り直す作戦ですが、5筋のまま戦う作戦の対応策も掲載されています。
ミ「あれ、アオちゃん。これ三間飛車じゃん。写真間違えてない?」
ア「ミギタマさん、ちゃんと解説見てください。振り直しの局面ですよ。高田先生の本でも書いてあったっでしょう」
ミ「…oh。思い出したぜ。そうだった。この作戦は中飛車の常套手段の1つだよな。ここでも気になったことがある」
ア「と、言いますと」
ミ「糸谷流とは金銀の構えがちょっと違う気が…」
ア「当番組では先手の左金が6八に配置しているのを糸谷流右玉と解説しましたね。実はこの形も糸谷流です」
※詳しくはこちらのサイトから
ミ「思い出したよ。この図の形、よく見たら先後逆だけど、高田先生の本でも出てたね」
ア「そうですよ。ミギタマさん、大丈夫ですか?」
ミ「うう…。いろんな将棋を見すぎて糸谷流の骨子を忘れてしまったぜ」
第4章「向かい飛車」
向かい飛車相手の右玉の戦い方の解説です。掲載されている棋譜は5局。相手の向かい飛車といっても、図のような角道を止めた向かい飛車や、☖3二金型向かい飛車、角交換向かい飛車、飛車を振り直すパターンといった様々な作戦があります。
ミ「向かい飛車と一口に言っても、かなり作戦の幅が広いね」
ア「向かい飛車からの迎撃に注意しながらの指し回しになりますね」
ミ「ほかの章でもいえるけど、磯谷先生は持ち駒を控えて打つことが多いね」
ア「争点を消す受けというべきかもしれません。全体として、安全勝ちを目指す内容の将棋が多いです」
解説:各章の終わりにはまとめとして、ポイントを整理するコーナーが設けられており、章末には掲載されています。また、章の合間にはコラムが掲載されており、トレードマークの髪の色や将棋との出会い、右玉と出会ったきっかけなどが書かれています。
ミ「コラムも人となりが分かって、磯谷先生をより深く知ることができる」
ア「なにより、イラストが可愛いのも特徴ですよね」
ミ「そうそう。表紙の絵もいいんだけど、各ページの右下に磯谷先生のイラストが描いてあるんだよ。あれはこれまでの右玉の本にはなかった」
ア「イラストを用いた戦法の解説書はそんなに多くはありません。媒体や、文字も見やすく、ポイントの局面を絞って解説されているので読みにくさは感じませんでした」
ミ「じゃあ、アオちゃん。次のコーナーいってみよ~‼」
ア「はい。『ミギタマ式将棋短歌』‼…って、ミギタマさん、このコーナーの主旨を教えてください」
ミ「以前は『浪漫飛行的読書感想文』というコーナーだったよね」
ア「はい。たしか、いろんな方に本の感想を聞いてみるコーナーだったんですが…。今回は?」
ミ「実はミギタマ、ある本がきっかけで短歌がマイブームになった。感想文だと話が長くてわかりにくいという声もあったから、短歌で本の感想を表現したい」
ア「…わかりました。確か、短歌は一首と数えるんでしたね。ではミギタマさん、本書の感想を一首お願いします」
ミ「OK。発表しよう…」
個性派の
唯一無二の
乙女様
描く右玉
受けつぶしの譜
ア「では、ミギタマさん。解説をお願いします」
ミ「唯一無二の『唯』という字は磯谷先生の名前もかけている」
ア「磯谷先生のお名前はいそや『ゆい』でしたね」
ミ「『乙女様』という表現は難しいところなんだよ」
ア「と、言いますと?」
ミ「『女流棋士』とあてはめてもいいんだけど、それだと普遍的で最初の『個性派』が生かせない。かといって、他の表現も浮かばなくて…。苦肉の策でひねったのが『乙女様』というわけ」
ア「乙女の定義は明確ではありませんが…。個人的には面白い上の句だと思います。下の句のポイントは?」
ミ「磯谷先生の本書を読んでの棋風をストレートに表現してみた。文章と棋譜を見ても分かるんだけど、上部脱出とか、攻め駒を責める指し回しとか…。明らかな受けの棋風なんだよね」
ア「『完封勝ちを狙う』という表現もありましたからね。『受けつぶしの譜』という表現も納得できます」
ミ「もちろん、将棋は受けだけでは勝てない。でも、受けの力が強くないと将棋は強くなれないという」
ア「磯谷先生の指し回しは、本書を読む限り受けの極みというべきでしょうか」
ミ「消極的の見方も否めないが、カウンター狙いという明確な方針が分かりやすい」
ア「右玉の基本的な考えの1つですね」
おすすめポイント
ミ「アオちゃん、この本は誰に薦めたい?」
ア「やはり、右玉党の方必携の一冊といえるでしょう。本書は磯谷先生の勝ち将棋はもちろん、負け将棋も掲載されています」
ミ「それは心強いね。負け将棋から学ぶことも大事だからね」
ア「また、タイトルが『対振り』と書いてあるので振り飛車党の方にも読んで損はない一冊といえます。最新対策も書かれていますので、ぜひ対抗本としても注目してくださいね」
ミ「異色の大型新人の右玉本、みんなもぜひチェックしてくれよ。感想も待ってるぜ」
※この本を読んだ方がおりましたら、当ブログにコメントをお寄せいただけると嬉しいです。
エンディング
ミ「いやーアオちゃん、あっという間のスペシャルだったね」
ア「久しぶりに将棋の担当で楽しくて、面白かったです」
ミ「どうだろう?不定期だけど、こんな企画はまたやってみたいよね」
ア「右玉の情勢次第ではないでしょうか?また本が出たらやってみたいですね」
ミ「D、その辺はどうなの?」
D「カンペ(今後は未定です。でもまたの機会があれば)」
ア「Dは乗り気ですね。さすが右玉党」
ミ「というわけで、また右玉の本が出たときにみんなと分かち合おう。というわけで今日はここまで。お相手はDJ.ミギタマと」
ア「アシスタントのアオテツでした」
ミ「みんな、またね~。See you again someday. バイバ~イ」
♪~(エンディングBGM)
この本を読んで将棋が好きになった、将棋が強くなったというお声をいただければ、これほどうれしいことはありません。読者の皆様が将棋本を読んで、将棋が好きになる、将棋の力が強くなることを祈念いたします。なお、次回の書籍紹介は8/18(日)を予定しています。
今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。