読者の皆様こんにちは。雁木師でございます。今日は「将棋ウォーズ戦記」のコーナーです。このコーナーは私の将棋ウォーズの対局を振り返るというものです。
実戦の振り返りの前に、将棋ウォーズの近況をお話しします。先月10分切れ負け(通称10切れ)で二段に復帰した私は、10秒将棋での二段昇段に挑戦し、先月末についに二段に昇段。これで10切れ、3分切れ負け(通称弾丸)、10秒将棋の全部門で二段に昇段しました。私はこれをオール二段と呼んでいますが、初段昇段からかれこれ9年近くかけての二段昇段に、苦しんだ努力が報われたと安堵しました。
オール二段達成後は、弾丸の三段昇段を目指しました。一時は達成率が80%近くまで到達しましたが、連日の指しすぎ(廃指しとも言います)がたたったせいか達成率は一気に急降下。ウォーズ用語でいう「レートが溶ける」状態に陥りました。
現在は「今達成率が最も高い部門の達成率をさらに伸ばす」という意識で、その日の達成率の現状を見て、どの部門をやるかを決めています。現在はどの部門も20%未満と苦しんでいますが、負け続けてしまうと知識もないのに様々な戦法に手を出す私の悪い癖が影響しています。負けが込み続けていた時は村田システムを連採していました。ただしそれではマズいと思い、得意の右玉を軸に戦うスタイルに戻しています。
今回分析する将棋は、久しぶりに矢倉に目覚めた対局を振り返ります。持ち時間は10切れ、後手番が私です。お相手の方は10切れ二段です。
まずは今回のテーマ図をご覧ください。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240225/11/shogi-gangiman/1d/91/j/o1034108015405741203.jpg?caw=800)
相矢倉ですが後手番の私の陣形に違和感を覚える方もいるかと思います。先手のお相手は金矢倉と呼ばれる矢倉の王道と呼ばれる囲い。対する後手の私は土居矢倉と呼ばれる、平成の終わりに流行し始め近年のタイトル戦にも登場した異色の矢倉です。居飛車を覚えたての方は、ぜひ先手の矢倉から勉強されることをおススメします。
実戦はここから
☗5七銀 ☖6三銀
☗9六歩 ☖8一飛
☗3七角 ☖6二金
☗6八銀左
と進行します。
(1図)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240225/11/shogi-gangiman/92/f2/j/o1027108015405741208.jpg?caw=800)
1図の☗6八銀左は不思議に見えました。理由は☖8六歩からの歩交換を許す流れが、どう働くかが分からなかったということです。私が推察するには☗7七桂と跳ねるのかと思いましたが、実際の進行は1図から
☖8五歩 ☗2六角
と角を転回し、間接的に6二の金に狙いを定める作戦です。
☖6二金・☖8一飛型は角換わりでよく見る構えですが、他の戦型でも応用が利きます。土居矢倉でも私は好んで指す形で、下段飛車で攻防に利かせる意図があります。対するお相手の角の転回も有力な対抗策の1つで、間接的に金ににらみを利かせて後手の陣形を乱すことができれば局面を優位に運ぶことも可能です。私は☗2六角の瞬間に☖8六歩から1歩交換を果たします。以下は
☗8六同歩 ☖同飛
☗8七歩 ☖8一飛
☗3七桂
と進んで2図がこちら。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240225/11/shogi-gangiman/3f/75/j/o1080104215405741210.jpg?caw=800)
お相手の☗3七桂は、次に☗4五歩から仕掛けを狙っていくいわば「力を溜める」一手。
☖4五同歩 ☗同桂
と進行すれば先手が指しやすく見えます。☗4五同桂に対する応手が難しく、☖2二銀と桂馬を殺す狙いは☗4四歩が痛く先手優勢。☖4四銀と受ける手は、
☗4四同角 ☖同金
☗5三銀
が厳しく、後手の陣形が崩れてしまいます。これは☗2六角に対する☖7二金の避け方を咎める攻め筋と言えます。
実戦は2図から☖6五歩と私から仕掛け、以下
☗6五同歩 ☖7五歩
☗6六銀 ☖7六歩
☗4八飛 ☖7四銀
と踏み込んだ攻めで先手陣を圧迫させます。以下は私が攻め、相手が受ける展開で迎えた3図の局面がこちらです。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240225/11/shogi-gangiman/92/c6/j/o1080102315405741211.jpg?caw=800)
3図の☖5七金は飛車と銀の両取りですが、先手に上手い返し技があります。局面は棋神解析では先手有利。その理由は飛車角の働きの差にあると考えます。先手の飛車角は、後手陣に直通の攻めが刺さっている状態。一方の後手は攻め筋は8筋ですが先手の手厚い金銀のブロックに駒が進めない状況です。
実戦は3図から
☗4四角 ☖同金
☗同飛車
とお相手は2枚換えを決行。角の頭は丸いため、私は☗4四同飛に対して☖4三歩と受けるも、☗3四飛から歩をかすめ取られる苦しい展開に。以降は私は先手の飛車に当てて攻めをしのぎ飛車角交換が成立。そして4図の局面を迎えます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240225/11/shogi-gangiman/26/29/j/o1080102615405741212.jpg?caw=800)
4図から私は☖7六銀としましたが、代えて☖8五歩から軽く攻めるのが優りました。☗8五同歩と応じれば☖同桂が銀アタリで後手まずまず。
実戦は☖7六銀から
☗7八銀打 ☖同銀成
☗同銀 ☖7六銀
☗7八銀打 ☖同銀成
☗同銀
と千日手コースに入りかけたタイミングで☖8五歩が入り、後手有利に進みかけました。
しかし、その後は私が攻めあぐねたスキをお相手は見逃すことはなく、攻守逆転。馬とと金を作られて私の玉は風前の灯火に。迎えた5図の局面はこちらです。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240225/11/shogi-gangiman/a8/f6/j/o1080103515405741213.jpg?caw=800)
5図の☖2二歩はお相手を「打ち歩詰め」に誘わせるために放った受けの悪手です。ここで☗3二歩と持ち駒の歩で王手をかけてしまうと後手玉が詰み、反則負けで後手の勝ちとなります。しかし、将棋ウォーズでは打ち歩詰めができない仕様になっているので、反則を誘うテクニックは通用しません。なので惑わされないように注意したいものですね。
さて、実戦は後手玉に詰めろをかけるチャンスでしたが、お相手はここから☗2四歩とと金を守るために歩を打ちました。しかしここでは、☗4三銀成が詰めろの一着。馬が後手玉に利いているので☖4三同銀と取ることができません。なので☖2三歩とと金を払いますが、かまわず☗4二成銀から寄せていけば後手玉は一手一手の状態になります。
実戦は☗2四歩で再び攻守が入れ替わり、私は☖6九角成から猛攻を仕掛けます。以下
☗6九同金 ☖同龍
☗8五銀
と進み6図。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240225/11/shogi-gangiman/a6/27/j/o1080101915405741217.jpg?caw=800)
ここでは後手に勝ちがありましたが、実戦は3手1組で人間感覚では形勢不明に見える展開に。6図での正解手は☖7七金。最善の粘りは☗7七同玉ですが
☖6八龍 ☗7六玉
☖6七龍 ☗8六玉
☖9五金
までの詰みです。実戦は6図から単に☖6八龍と王手をかけてしまい、☗7八歩に☖8五飛で7図を迎えます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240225/11/shogi-gangiman/85/f5/j/o1080102515405741220.jpg?caw=800)
皆様はこの局面をどうとらえるでしょうか?どちらの勝ちと見ますか?先手勝ちか後手勝ちか、手順もお考えいただいてからこの先をお読みください。
それではまずは実戦の進行から。実戦は7図から、お相手は☗4二馬とスパークしました。この一手から後手勝勢、そして勝利につながりました。以下
☖4二同玉 ☗8六角
☖7五金 ☗5四桂
☖5二玉 ☗6八角
☖8七飛成 ☗同玉
☖7六銀 ☗8八玉
☖8七銀打 ☗7九玉
☖8八銀打 ☗6九玉
☖5八金打
まで166手で私の勝ちとなりました。
(投了図)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240225/11/shogi-gangiman/fa/07/j/o1077101615405741221.jpg?caw=800)
実戦は7図からの☖8五飛が強襲の形となって後手の勝ちとなりました。しかし、7図の局面は棋神解析では先手の勝ちとの評価。正解は、☗3二とでした。以下
☖同玉 ☗4四桂
☖同歩 ☗5四角
☖4三桂 ☗4二馬
☖同玉 ☗4三角成
☖3一玉 ☗3二銀
までで後手玉は即詰みに討ち取られる筋があったのです。
(変化図:ぴよ将棋から)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240225/11/shogi-gangiman/f9/b2/j/o0882108015405741227.jpg?caw=800)
実戦はお相手の☗4二馬のタイミングが少し時期尚早だったことにより、私の玉は九死に一生を得る形でした。よく言えば、難解に持ち込んで勝てた将棋。悪く言えば、正しく咎められたら負けていた将棋です。
一局全体を振り返ってみて、序盤はお相手の王道矢倉に私は変化球の土居矢倉で真っ向勝負を挑みました。中盤からは私が仕掛けるもお相手の手厚い守りを崩せず、一瞬の返し技で今度は私の守備陣が崩壊。その後は二転三転の攻防が最終盤まで続きましたが、解析で大悪手と評された5図の☖2二歩と7図の☖8五飛が結果としてお相手を惑わせた形になり勝ちを拾いました。
大山康晴十五世名人の名言の1つに「助からないと思っていても助かっている」という言葉がありますが、本局は見事にそれを体現した将棋ともいえるでしょう。
これで今月の将棋ウォーズ戦記を終わります。次回もどうぞお楽しみに。
今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。