らかな寝息。目の前には翔の背中がある。駐車場までの石の階段を翔と静かに降りる。
穏やかな気持ち。安らぎの何か。上手くは言えない。何だろう。何だろう。翔とミギコ。清らかな心を持った二人。由紀は知らず知らずの内に微笑んでいた。
翔が低い声で呟いた。
「いつもすいません」
由樹は微笑んだ。
「仕事ですから。…それより」
「えっ」
「ミギコさん、いつか気づかれますよ、お仕事の事」
翔は俯いた。
「どうする事も出来ないのはわかるけどいつかは、」
由樹は慌てて口を押さえた。
「ごめんなさい」
翔は首を横に振った。
「いいえ。そう言ってくれるって言うのは、僕等の事を心配してくれての事だから。ありがとうございます。心配されるっていうのは中々いいもんですね」
由樹はふと胸に小さな感動を覚えた。頭を下げて車に乗り込み、発進させた。
「おかえり」
ミギコの微笑み。翔はコートを脱ぐとそのままミギコのベッドに潜り込んだ。
ミギコの頬を撫でる。
「冷たい手だね」
「もう冬だからな。しばらく留守にして済まなかった」
「ううん、クラブで何かあったの?」
「ちょっとな、もう大丈夫だけど」
翔は次の瞬間ハッとした。ミギコにつけられてるチューブの数が前よりも多くなってきている。
現実。
翔は顔を引き締めた。
「圭ちゃんがお見舞いに来てくれたよ」
「そうか、相変わらず太ってたか?」
二人で笑い合う。