東京フクロウ33 | 小説のブログ

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柏原玖実といいます

らかな寝息。目の前には翔の背中がある。駐車場までの石の階段を翔と静かに降りる。

穏やかな気持ち。安らぎの何か。上手くは言えない。何だろう。何だろう。翔とミギコ。清らかな心を持った二人。由紀は知らず知らずの内に微笑んでいた。
 翔が低い声で呟いた。
「いつもすいません」
 由樹は微笑んだ。
「仕事ですから。…それより」
「えっ」
「ミギコさん、いつか気づかれますよ、お仕事の事」
 翔は俯いた。
「どうする事も出来ないのはわかるけどいつかは、」
 由樹は慌てて口を押さえた。
「ごめんなさい」
 翔は首を横に振った。
「いいえ。そう言ってくれるって言うのは、僕等の事を心配してくれての事だから。ありがとうございます。心配されるっていうのは中々いいもんですね」
 由樹はふと胸に小さな感動を覚えた。頭を下げて車に乗り込み、発進させた。

 

 「おかえり」

ミギコの微笑み。翔はコートを脱ぐとそのままミギコのベッドに潜り込んだ。

ミギコの頬を撫でる。

「冷たい手だね」

「もう冬だからな。しばらく留守にして済まなかった」

「ううん、クラブで何かあったの?」

「ちょっとな、もう大丈夫だけど」

翔は次の瞬間ハッとした。ミギコにつけられてるチューブの数が前よりも多くなってきている。

現実。

翔は顔を引き締めた。

「圭ちゃんがお見舞いに来てくれたよ」

「そうか、相変わらず太ってたか?」

二人で笑い合う。