東京フクロウ32 | 小説のブログ

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柏原玖実といいます

女は輝く様な笑顔を見せた。

 

 「あら、いらっしゃい」

エミは微笑んだ。翔は小さなブーケをエミに渡した。エミの顔がほころぶ。

「いつもありがとう」

「いいのよ、座って。お花ありがとう」

小さなクラブ。翔はショットを頼んだ。

「ほんとはお礼が出来たらいいんだけど」

「それやったら捕まっちゃうからね」

二人は笑った。

「だけど良かったわ、さっきあの子から電話があってね、嬉しくて泣いた、って。あの子ずっと貴方に憧れてたのよ。引っ込み思案の子だけどほんとにいい子だから応援してたの。今日はいい日だわ」

エミは微笑んだ。

「あたしはあんた好きよ。若いけど頑張ってる。本当に」

翔は頷いた。

エミは何となくわかっているのだろう。

風の噂で。

「女に優しい所が偉いわよね、しかも分け隔て無く全部の女に優しい、素晴らしい」

翔は少し照れた様に鼻をかいた

「俺にとって、女は宝だから」

エミは胸に上って来る熱い物を抑えずにはいられなかった。思わず涙ぐむ。

「乾杯」

エミはそう言ってグラスを傾けた。

翔もそれに応えた。心地良い音がした。

 

 真夜中近く、翔はそっと玄関のノブを回した。なるべく音を立てずに。由樹がそっと駆け寄る。
「お帰りなさい、お仕事は」
「今日はちょっと。今日はもういいですよ、と言ってもこんな時間じゃ、」
「大丈夫ですよ、車で来てますから」
「じゃあ下まで」
 由樹は上着を手にしながらそっと後ろのミギコを振り返った。暗い部屋に響く安