由樹は胸に感動を覚えた。
「いえ・・・私なんて」
圭太は少し顔を曇らせた。由樹がそれに気づく。帽子を深くかぶり視線を合わせずに尋ねる。
「ミギコは・・・」
由樹は少し憂いを残しながら何も答えなかった。圭太は頷いた。
「何かあったら電話下さい。夜中でも。俺こう見えても警察官なんです。不細工ですけど」
由樹は苦笑した。
「心強いです。安心して看護が出来ます。私も皆さんの友達の中に入れて下さいね」
「もちろんです。じゃ」
圭太は去って行った。
由樹は通路の空を見上げた。
やがて風は冷たくなるだろう。
女の髪が揺れる。
翔は腕の上で優しく撫でた。
「ありがとう」
女の優しい声。
翔は思っていた。
女の声は何ていい声で響くんだろう。いつもこの胸に。
「初めてが俺で良かったの?」
女は頷いた。
「ずっと憧れてたんです、ほんとにありがとう」
女はそう言うと立ち上がり、服を着た。
翔はドアの所で優しく女の頬を撫でた。
「ありがとう、と言ってくれる女ほどいい女はいない。君、イケてるよ」
「そんな、私なんて・・・」
翔は微笑んだ。
「女にとって一番大事なのは"可愛げ"だ。君はそれを知らずに使っている。頭のいい女だと思うよ。今日は出会えて良かった。女にとって一番大事なプレゼントをありがとう」