圭太はミギコと翔の部屋に来ていた。
ミギコの寝ているベッドの横の椅子に座る。
「思ったより顔色がいいんで安心したよ」
「うん」
圭太の優しい笑顔。
由樹はそれを見ながら台所でお茶を入れていた。
「新しい車買うんだ。春にな。それで俺の家族も連れてドライブに行こう。どこに行きたい?」
「あそこがいい、大きな滑り台があるとこ、前に皆でお花見した所」
「じゃあそこにしよう。それまでに治さないとな」
「うん」
ミギコは飛び切りの笑顔を見せた。
「翔はいつも遅いのか」
「うん。バーが終わってからもお客さんとの付き合いがあるからって」
圭太は頷いた。
「でも・・・」
「どうした」
「時々思うんだ。あたしが翔の人生壊しちゃったんじゃないか、って・・・」
圭太は優しく微笑み、そしてミギコの髪を優しく撫でた。
「なあミギコ。誰でも病気になるよ。ならない人間なんていないよ。俺だってなるよ。その時はカミさんが看病してくれるし、俺もカミさんが病気になったら看病するよ、それはお互い様なんだ。家族だったら当たり前の事なんだよ。今度翔が病気になればその時はミギコが看病してやればいい。何でもお互い様だよ、そうだろう?」
「うん」
ミギコは微笑んだ。
「お茶どうぞ」
由樹がカップを圭太に渡した。
「すいません、仕事なんで一口だけ、よばれます」
圭太はカップのお茶を一口飲むと立ち上がりミギコの顔を撫でた。
「また寄るからな」
「ありがと、圭ちゃん」
圭太と由樹は玄関の外に出た。圭太は由樹に靴べらを返した。
「由樹さんが通ってくれて助かってます、これ以上の安心は無い、ありがとう」