京都大学や住友林業などが、実際に宇宙に打ち上げることが可能な“木造人工衛星”をつくり出したという。
この人工衛星は、10センチ四方の立方体という超ミニサイズ。日本の伝統工芸技術が活用されており、100分の1ミリ以下の高い精度が求められたというが、木工芸職人が釘やネジを1つも使わずに熟練の技だけで組み上げたそう。

開発チームには、京都市にある「黒田工房」の代表を務める臼井浩明氏が参加したという。同社は大津市に工房を構えており、普段は国宝の障壁画などの修復を行っているようだ。2023年には、表装建具製作分野にて、文化庁より選定保存技術保持者として認定されたそう。

温度の変化がめまぐるしいという宇宙空間。そのため、人工衛星には熱で膨張する特性を持つ金属や接着剤といったものは使用できないそうだ。そこで、今回木材をダイレクトに繋ぎ合わせることができる技術を持っている臼井氏に協力依頼がきたという経緯があるそう。

臼井氏は、同社スタッフの崔錬秀氏と一緒に、板材を手作業でじっくりと加工したという。そして、きりだんすなどに使用される「留形隠し蟻組接ぎ」という技法によって、木材と木材を協力に組み立てることに成功したそう。
臼井氏は、「通常作業で行うよりも高レベルな精密性が必要だったが、それを実現できて感慨深い」と語っていたという。

今回組み上げられた木造人工衛星は、打ち上げを経て、今年10月頃に宇宙へと放出される見通しとのこと。その間、耐久性などを検証しながら、人類の宇宙活動における木材利用の可能性について調査していくようだ。