【Day23 Camino de Santiago】2025.9.26 スペインと月と誕生日 | ちびタンクのひとりごと

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【Day23 ラ・アバ → メデジン 18km】


今日、私は47回目の誕生日を迎えた。


ここ数日、右膝に違和感を覚えスローステップ中である。

こんなことは去年、2,000km以上歩いても一度もなかった。


急がば回れ。

カミーノでは必要なことが起こる。


そんな言葉を胸に、今日は距離もそこそこに、小さな町のホステルを予約した。

カステロ(城跡)や川もある静かで小さな町。

ホステルも悪くない。

むろん、一人である。


一年に一日しかない自分の誕生日。

今年は一人スペインで過ごす。


カッコつけた話でも書きたいが、全然浮かんでこない。

いや、浮かんでこない訳ではないが、この灼熱の空の下、スペイン語のテレビ放送と工事の騒音を聴きながら、熱風が吹き込むバルのテラスで一人でビールを飲んでいると、なんだかどうでもよくなってしまった。


小さなドラマはいくらでもあるし、回想すれば誕生日に紐づく旅のエピソードもある。


日本より時刻が遅いこの国で、日本から頂いたメッセージについて語ってもいいだろう。

一人一人と紡いできた歴史があり、それは私の財産で、どれも語るに値する。


しかし、そんな全てを吹き飛ばすのが、スペインの風だ。


時刻は午後4時半。

今が一番暑いのだろうか。

地表から吹き付ける熱風に思考が停止する。


この国の人たちの底なしの明るさの理由がわかる気がした。

メンヘラになんかなっていられないのだ。

それが特別な日だろうが、素敵な町だろうが、暑いものは暑いし、冷えたビールを飲めば幸せ。

それだけである。


もう一杯ビールを頼み、店内のトイレに行くと奥に中庭があるではないか。

カウンターに置かれた中ジョッキを片手に店の中央を通って中庭に移動する。

四方を柄の細かい青色のタイルと、白いコンクリで囲まれたこの場所は、驚くほど涼しかった。

BGMにはほどよい音量でテンポのよいモダンなスペイン語の曲が流れている。


誰もいない中庭で、木で造られた味のある椅子に腰を掛ける。

同じく木でできた低いテーブルに足を投げ出し、ビールを飲んだ。


テラスとの差。

一体、この国はどうなっているんだ?


午後6時を迎えると、バルには徐々に人が増え始めた。

怒鳴るようなスペイン語のやり取りが耳に響く。

やがてそれにも慣れてくる。


ビールを飲み干すと外に出た。

人が出てきたということは、涼しくなったということだろう。

案の定、外は快適な温度に落ち着いていた。


少しだけ街歩きをと思っていたのに、結局カステロ(城壁)まで歩いてしまった。

足が痛いというのに、やれやれだ。

しかしその美しさは口述しがたい。

やっぱリきて良かった。

バカだなと思うが、こんな自分でしか居られないし、こんな自分で良かったと思う。

それは誰でもない、自分がそう思えば十分だ。


カステロのある高台を下る帰り道、オレンジ色の大きな夕日が今まさに沈もうとしていた。

その少し左に青白く映し出された小さくて細い三日月を発見した。


ちょっと前までは新月で、その存在を消していたのに。

太陽よりはっきりと、時の移り変わりを示してくれる月。

私はこの旅でどのくらい、こんな風に過ぎゆく時を感じるのだろう。


数年後、今日が特別な日になっていることは違いない。

そう思いながら、暗くなり始めた宿への道を急いだ。



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そんな今日の旅の様子はこちら↓