Con te Partiro ーvia Francigenaへの招待状ーvol.56 最終話 | ちびタンクのひとりごと

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大好きな旅のこと、心理学・スピリチュアル・ヨーガのこと、日々の気づきなどをつぶやいています♪


あれはいつだったんだろう。

正確な日は覚えていない。


もうきぬママは亡くなっていて、私は何かの折りに、一人で葛飾のきぬママのお宅に向かっていた。

伺ったのに明確な理由はない。

ただ、あの家がその後どうなったのか、気になっただけだった。


行きすがら、私は操さんが録音してくれたきぬママのコンサートを聞いた。


それはいつものエターナリーから始まった。


そして次の曲。

それは幾度となく聞いたはずの曲だった。


“Con te partiro” 

コン・テ・パルティーロ


サラ・ブライトマンが”time say good bye“のタイトルで歌った、日本でも有名な曲である。


別れの曲だと思っていたその曲を、きぬママは日本語でこう歌い出した。


それは、イタリア語の歌詞をきぬママが訳したものだった。


***


手をつなぎ 旅立とう 彼方へ

輝く愛の国 日のさす ところ

今 君と 見知らぬ国 彼方へ

幸せ 求めて 二人で行こう


腕に魯を 海を超え 地平線超え

いつも一緒に 二人で

君は私の太陽

闇夜を照らす月のように いつも


***


ハッとした。


ずっとずっときぬママは、一緒に行こうと言ってくれていたんだ。



きぬママのお宅は、あの時と変わらぬままだった。




あれから4年。




2024年6月9日

私はあの日と同じアブダビ経由ロンドン行きの航空券を取った。

出発は10日後の6月19日。



既にあの道への招待状はいただいている。



今、きぬママがどこで何をしているのかはわからない。

その後、颯花さんからもきぬママの名前を聞くことはなかった。



彼女が同席するかどうかはわからない。

まあ、たまには顔を見せるんじゃなかな?



Con te partirò (君と共に)

Su navi per mari (船を漕ぎ、海を渡る)

Che, io lo so (でもわかっている)

No, no, non esistono più (その航路はもう存在しない)

Con te io li rivivrò (それは私たちの中で生き続ける)

Con te partirò (君と旅立つ)

Io con te (君と共に)



”まーったく、あなたって。

私がここまでお膳立てしたのに、

ずいぶん時間がかかったわね。

でもまあ、あなたらしく、楽しんでいってらっしゃい。

ずっとずっと、

見守っているわよ。“



きぬママの、いつものお茶目な笑顔が浮かんだ。



ーーー終わりーーー



*()内は私訳



↓前回のお話