Con te Partiro ーvia Francigenaへの招待状ーvol.51 | ちびタンクのひとりごと

ちびタンクのひとりごと

大好きな旅のこと、心理学・スピリチュアル・ヨーガのこと、日々の気づきなどをつぶやいています♪


結局、私はドーバーに3泊した。


曇天の冬のドーバーは決して美しいとは言えず、一日もあれば見所を抑えられてしまうような小さな街だった。






そんな街で与えられた、なんの予定もない時間。


ビジネスホテルだと言うのにwifiも有料で、外界からシャットアウトされた時間だった。


「あれはなんだろう?」と気になった方向にただ進んでみたり。



寒い寒いと震えつつ、海辺で打ち寄せる波を見つめてみたり。



急に思いついて、読みたくなった本を探してみたり。



静かで、穏やかで、贅沢な時間だった。


おじさんばかりが集う、ビールとタバコの匂いが染み込んだ、ちょっとすえた匂いのする、けれども暖かそうなバー。


そこでビールを飲みながら、なんとはなしに周囲を見渡す。



楽しそうに乾杯をする家族。

テレビモニターに映るサッカー放映に一喜一憂するグループ。

少し気恥ずかしげに、目と目で語り合うカップル。


そんな誰かの日常をぼうっと眺めていると、不思議と心が満たされていくのを感じた。


忘れていた。

ただ、その場を感じるということを。

ただ、その時を愛おしむということを。


何かが起こる必要も、誰かと出会う必要もない。

ただ「ある」と言うことを、愛おしく感じるということを。


やたら曇天のドーバーの海辺が、私にそんな事を思い出させてくれた。



何者でなくてよい。


何者でもないことの心地よさ。


それはこれまでに感じたことのない、満たされた感覚だった。


ーーー


↓前回のお話