午後、宿からメッセンジャーで颯花さんに電話し、これまでの経過を全て告げた。
“きぬママ、イエス様やご両親の元に行けたんでしょうか?”
“うーん、まだみたい”
“えーーー。
これ以上、私はどうすればいいんでしょう?”
“なんか、とりあえず旅を楽しんでいいみたいよ。”
“へ?”
“まだ数日あるよね。“
“はい…。
でもそう言われても、気持ちの整理が…
だってまだ、きぬママは上に行かれてないんですよね。“
”うん。でもなんか、もういいみたい。
それに上に行かれるとき、しずちゃんにはわかるはずだって。
だからこれからは、しずちゃんの旅を楽しんでって”
正直、拍子抜けというか何というか、呆気に取られたと言うか。
戸惑う気持ちを隠せなかった。
しかしこれ以上、私にできることはなにもない。
カンタベリーの宿は今日までしか取っていなかった。
いずれにしても、明日どうするかを考える必要がある。
ドーバーまで歩こうか。
去年、イタリアのその一角を歩いたvia francigenaは、イギリス カンタベリーからドーバー海峡を渡りフランスに入り、スイスを超えてローマまで続く道。
ここはその道の起点である。
街を歩いているとVia francigenaの説明書きや道標を目にすることが少なくなかった。
カンタベリーから海辺の街ドーバーまでは約30km。
一日で歩けない距離ではない。
私は明日の宿をドーバーで予約した。
そしてやり残したことがないよう、もう一度カンタベリーの街を歩いた。
ーーー
↓前回のお話



