それから出発までの二日間、準備は深夜にまで及んだ。
このことはきぬママの家族にも関わることだとすると、できればご家族の名前を知りたい。
きぬママと長い付き合いであった妖精さんに連絡を取った。
墓地のことも気になっていた。
可能であれば、移転前の墓地でも手を合わせたい。
既に存在しない、他人のお墓に手を合わせることが無理難題であることは百も承知だった。
それでも聞くだけ聞いてみようと、移転を手伝った谷口さんと操さんに相談した。
それから旅の準備である。
急遽浮上したカンタベリーには、ロンドンからどうやっていけばいいのか?
カンタベリーにはどれくらいの教会があるのか?
どうしたら聖餐をもらうことができるのか?
調べなければならないことだらけだった。
そしてカンタベリーの宿の予約。
直近の予約であることに加え、季節はクリスマス。カンタベリーは現地イギリス最大宗派の総本山である。
貧乏旅行に耐えられる宿を探すのは困難を極めた。
さらにパッキング、旅行保険の加入と、やることにいとまはない。
それでも奇跡的に比較的安価で好立地の宿が確保できたほか、妖精さんからご家族のお名前を入手することができた。
続けて谷口さんと操さんからは移転前のお墓のおおよその位置情報を得た。
中でも谷口さんの記憶力は驚異的でだった。
移転前の写真数枚と、”この辺り”と⭕️をつけた墓地の地図、それに墓地入口からの墓石までの大まかな道順を、文字化して送ってくれた。
情報を集めながら私は、22日の予定を次のように立てた。
・朝、移転前のお墓へご挨拶
・午前中、A教会(祈祷書に書かれていた聖公会の教会)のミサに参加
・午後、移転後のお墓参り
・その足で成田から夕方のフライト→ロンドンへ
事の成り行きを見守ってくれていたなおさんが、A教会のミサと移転後のお墓参りに同席してくれるという。
さらに出発前日の21日、水器さんが颯花さんのイベントに、祈祷書を持ってきてくれた。
“お葬式や聖餐に関するところに、付箋をつけておいたよ。”
祈祷書とは、そうした式典や儀式の執り行い方を記したものだということを、私はその時初めて知った。
こうして出発に必要なすべてのパーツが揃った。
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↓これまでのお話し