”今、きぬママさんが来ててね。
すごい勢いで訴えてくるの。
しずちゃんに伝えて欲しいって。
何かしてほしいことがあるみたいなんだけど、なんのことかわかる?“
颯花さんとの電話は意外すぎる内容から始まった。
”私もきぬママさんに懇願したのよ。
今、イベントの準備で手一杯だから、終わるまで待ってくれませんか?って。
でも、もう子どものようにわんわん泣いて、今すぐにしずちゃんに伝えてくれって言って聞かないの。“
”え、え?、えーーー???
私に何をしろって言ってるんでしょうか?“
”それが私にも分からないの。
ただ、まだイエス様のところに行けていないって言っていて。
何かして欲しいことがあるって言ってるんだけど。
なんのことかわかる?“
”全然わかりません“
”きぬママさん、キリスト教徒だったんだっけ?
宗派はなんだったの?“
”宗派って、カソリックとかプロテスタントってやつですよね?
厳格だったから、カソリックかな?
過去のメールやブログを調べてみればわかると思います。“
”うん。調べてみて。
お葬式はしたのかしら?”
”はい。最後に所属された教会でやって、私も出席しました。
きぬママ、激昂しちゃう性格だったから、教会との関係も複雑だったようで、あれこれ移り変わっていたと思います。
それでも最後にたどり着いた教会の牧師さんは信頼に足る人だったようで、よくその方のお話をしていました。
ただ、きぬママが亡くなる1年前くらいにその牧師さんもご病気されて、交代になってしまって。教会が一丸になって頑張らなきゃいけない時だって、話していました。
きぬママは東大病院での献体を希望されていたので、お亡くなりになられてからすぐに、ご遺体は東大に運ばれてしまったんですよね。
そういう意味では、ご遺体なしのお別れの会という形でした。
去年の秋かな?献体が終わりお骨が戻ってきて、納骨式をやりました。千葉の墓地の集合墓石がお墓になっています。納骨式のとき、私は牧師さんにお願いして、少し、お骨をいただきました。
そう言えば、亡くなる前に墓じまいもしたんだっけ。“
”そっか。なんかその辺りにヒントがありそう。他に思いつくことある?“
”うーん。分からないけど、今週末から冬休みとったんで、颯花さんのイベントの手伝いが終わったら、どこか旅にでようと思ってたんですよ。
さっき、まさに航空券取ろうとしていたところでした。
どこかに行って、なにかしろってことですかね?
ちょうどクリスマスだし。”
“クリスチャンにとって、クリスマスは大きいよね。
場所に心当たりはある?“
“去年行ったアッシジでしょうか?
きぬママも行ったって言っていたし。”
“なるほど”
“きぬママ自体に、何をして欲しいか聞けないんでしょうか?”
“そこははっきり仰らないのよ。
とにかくしずちゃんに急いで何かをしてほしいって、今も泣いてるの。
ほかにも心当たりを調べてみてくれない?
その冬休み、クリスマスがキーになると思う。”
“わかりました。
って、答えて大丈夫かな…?
とりあえず、探ってみます。”
そう言って45分ほどの電話を切ったものの、心あたりは全くなく、雲を掴むような気持ちだった。
きぬママ、私に何をしてほしいの?
突然、訳の分からないミステリーに迷い込んだような心持ちで、とりあえずきぬママのメールやブログから、きぬママが一体、なんの宗派だったかを探すことにした。
ーーー
↓前回のお話